実質GDP成長率予測の改定、2020年はマイナス1.3%に転落、2021年は3.3%

(スイス)

ジュネーブ発

2020年03月25日

スイス連邦経済省経済事務局(SECO)は3月19日の発表で、2020年の実質GDP成長率予測を見直し、前回12月予測の1.7%からマイナス1.3%に引き下げ、2021年を3.3%とした(表参照)。新型コロナウイルス拡大の影響で現在は暫定的に経済活動が停止状態にあり、回復が始まるのは2020年後半と予測する。これを踏まえ、前回予測時から2020年は3.0ポイントもの下方修正で、経済成長がずれこむ2021年は2.1ポイントの上積みとした(注:数値は主要スポーツイベントが現在の予定どおり開催された効果を織り込んだもの)。

表 SECO経済予測(2020年3月19日発表)

2020年前半は、貿易相手国の経済活動は新型コロナウイルスの影響を強く受け、前回予測していた国際的な経済回復は見込めなくなる。国際情勢の影響をより受けやすいスイスの観光や輸送産業が大幅な売り上げ減少となり、国際的なサプライチェーンもその影響を強く受ける。一方で、国際的な経済の不確定性から、年初からスイス・フラン高が進むと予測する。

国内産業においても、ウイルス感染対策により事業活動を制限または停止せざるを得なくなる企業は、特にホテルやレストランといったサービス産業で多数発生し、余暇のための消費や耐久消費財の購入は一時的に落ち込み、先行きの不確実性と稼働率の低下により、企業は設備投資や雇用を絞り込むとみられる。分析グループは、感染拡大が年内に落ち着いた場合、2020年後半から2021年に経済は徐々に回復基調に乗り、企業が設備投資や雇用を再開するとした。しかし、2021年も前回予測した同年のレベルには到達せず、2021年の平均失業率は3.0%と悪化したままとなるとしている。

現時点では予測の不確実性が極めて高いとした。感染症対策に要する期間が長引けば、国外の需要低迷やサプライチェーンの混乱が拡大し、多くの経済活動に重大な影響を与えることになる。さらに、新型コロナウイルスの国際的な拡大の過程で流動性の問題や債務の不履行が発生した場合、金融システムの安定性に関わるリスクが増大する可能性があり、金融市場の混乱とさらなるスイス・フラン高の圧力となる。

なお、スイス国立銀行(SNB)は19日、預金金利をマイナス0.75%に据え置くと発表した。既に金利は世界最低レベルにあってれ以上の引き下げ余地が少ないためだが、中小企業対策のため、SNB当座預金のうちマイナス金利除外となる範囲を拡大。また、スイス・フラン高対策で2019年に132億フランの為替介入をしたことを発表した。前年実績の23億フランから大幅な増加となった。

(注)スイスには、国際オリンピック委員会(IOC)や国際サッカー連盟(FIFA)、欧州サッカー連盟(UEFA)など主要国際スポーツイベントの本部が置かれているため、オリンピック、サッカーのワールドカップ、欧州選手権の開催年には、放映権収入がスイスのGDPを押し上げ、翌年のGDPにはマイナスに作用する。

(和田恭)

(スイス)

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