米政府がUSMCAの暫定実施ガイダンス発表、自動車原産地規則順守の猶予申請も受け付けへ

(米国)

ニューヨーク発

2020年04月21日

米国税関国境保護局(CBP)は4月20日、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の暫定実施ガイダンス外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。協定の発効日は未定だが、ガイダンスはUSMCAの下で物品貿易に関する特恵関税を享受するための規則を事前に情報提供するもの。また、米通商代表部(USTR)は、協定の自動車分野の原産地規則の順守に関して、期間の猶予を希望する自動車メーカーに対して代替のスケジュール案とともに申請を受け付ける旨の官報案外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを明らかにした。正式には4月21日付の官報で公示する。

USMCAの特恵関税を享受するためのルール

CBPが発表した暫定実施ガイダンスは45ページからなり、USMCA域内の輸入者が協定で定められた特恵関税率で他の域内国から物品を輸入する際に順守すべき原産地規則や、税関への申告方法などを示す。例えば、原産地規則では特に自動車分野で北米自由貿易協定(NAFTA)以上の域内調達率が求められるが、ガイダンスでは付属書Ⅰ「自動車分野の原産地規則と手続き」として詳しい規則を説明している。

税関への申告については、輸入者が正確な書類の提出に責任を持つとし、輸入者による自己申告制を採用している。輸入者は原産性を証明する書類などを物品の輸入日から最低5年間は保管する義務を負う。完成車メーカーは一般的な書類に加えて、労働付加価値割合(LVC)と鉄鋼・アルミ製品の調達基準を満たすことを証明する書類も同期間保管する必要がある。ただし、LVCにかかる記録保管については、労働省が詳しい規則を今後発表するとしている。なお、CBPは今回のガイダンスの内容はあくまで事前に情報提供するためであり、最終的な規則ではなく、今後変更の可能性があるとしている。

自動車原産地規則の順守に期限の猶予与える可能性

USTRは、協定が定める自動車原産地規則の順守期限とは異なるスケジュール計画を希望する完成車メーカーの申請を受け付ける。希望するメーカーは、代替するスケジュール計画の草案を7月1日までに、最終的なスケジュール計画を8月31日までに提出する必要がある。提出すべき情報は官報案に詳しく記載されており、Eメールで「USMCAAutosCommittee@ustr.eop.gov外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」宛てに送る必要がある。

USTRは代替スケジュール計画の例として、本来は発効から3年かけて達成しなければならない域内調達割合(RVC)やLVCの達成に、追加で2年の猶予を与える可能性を示唆している。ただし、期限の猶予が認められる自動車台数は原則として、各メーカーが協定発効前の1年間に生産した台数の10%か、協定発効前3年間の平均生産台数の10%のいずれか数値が大きい方が上限となる。また、カナダとメキシコにおける自動車輸入に関しても同様の猶予を希望する場合は、各国が定める手続きにのっとって申請する必要があるとしている。

(磯部真一)

(米国)

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