新首相にムヒディン・ヤシン氏が就任、政情は依然混迷続く

(マレーシア)

クアラルンプール発

2020年03月02日

マレーシアのアブドゥラ・リアトゥディン・アル・ムスタファ・ビラ・シャー国王は2月29日午後6時ごろ、マレーシア統一プリブミ党(PPBM)党首で、前内務相のムヒディン・ヤシン氏を第8代首相に任命し、翌3月1日に宣誓式を行った。2月24日にマハティール・モハマド前首相が辞表を提出してから、PPBMが与党連合の希望連盟(PH)から脱退し、人民正義党(PKR)副党首で、前経済相のアズミン・アリ氏ら11人の議員がPKRを離党したことにより、連邦下院での過半数(112議席)の支持を得る政党連合がなくなってしまったことから、次期首相候補を決めるため、国王が222人の全国会議員と面会、各党の代表者との議論を重ねてきた。

国王、早期の政情安定化を見据えた判断

マレーシアでは、憲法において国王の判断で過半数の信任を得そうな下院議員を首相に任命できると定められている。しかし、2月28日の王室の声明では、全議員との面会の結果、次期首相候補を決めることはできなかったとし、引き続き各党の代表者と議論する方針を示していたが、一転、ムヒディン氏の任命に至った。報道によると、国王は「国民のためにも、次期首相の任命プロセスを長引かせるべきではない」とし、一連の政治混乱を収めたいという意向が示されたという(「国営ベルナマ通信」2月29日)。

マハティール氏、希望連盟は不信任決議案提出の構え

しかし、国王の任命発表後の2月29日午後11時ごろ、マハティール氏がフェイスブックで、PPBMのうち自身を含む6人はムヒディン氏を次期首相として支持しないとし、自身への支持を表明するPHを含む114人のリストを公表した。報道によると、PHは、統一マレー国民組織(UMNO)、全マレーシア・イスラム党(PAS)などの支持を受けるムヒディン新首相に対する不信任決議案を提出する意向だという。PHは2月29日に、次期首相候補としてマハティール氏を支持することを表明している。マハティール氏は3月1日の会見において「現時点(3月1日)で、114人の議員が(マハティール氏支持を表明して)いるが、今後(当該議員が)大臣職などの打診を受けることも予想され、直ちに過半数を維持できなくなる可能性がある」とし、下院議会の開催を急ぐ構えだ。なおPHは、当初3月9日から開催となっている第3回下院議会を予定どおり行うよう求める声明を発表している。新首相が任命されたものの、政情は依然として混迷を極めているといえる。

ムヒディン新首相は、2020年3月時点で72歳。1971年にUMNOに入党し、大臣職を歴任後、2009~2015年に副首相を務めた。その後、ナジブ・ラザク元首相の汚職疑惑問題を受けて、2016年7月にUMNOを離党。同年8月にマハティール氏とともにPPBMを結成し、2018年5月の総選挙後からマハティール政権において内務相を務めた。

(田中麻理)

(マレーシア)

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