低迷する原油価格、米国エネルギー関連業界の動き

(米国)

ヒューストン発

2020年03月27日

原油価格(WTI先物)は、3月20日に一時的に19.46ドルの底値を付け、20ドルを割り込んだ。3月19日には、テキサス州の石油・天然ガスの生産、パイプライン輸送などを管轄するテキサス州鉄道委員会(TRRC)が減産調整を検討する、との臆測記事が米国紙で報道された。TRRCは3月20日にこれを否定するプレスリリースを出したが、これに対し、市場はTRRCが供給過剰を解消できない、と捉えたようだ。

TRRCのプレスリリースの要点は以下のとおり。

  • 持続不可能なレベルまで下落した原油価格によるテキサス州経済への影響が懸念される。原油生産者の直接雇用は同州内だけで36万人以上、2019年の税収およびロイヤルティーは約163億ドルに上る。
  • 複数の石油およびガス生産者が、TRRCに対し石油生産量の比例配分割当を再開することを提案している。
  • TRRCのウェイン・クリスチャン委員長は、自由市場の保守主義者として、石油生産量の割当アプローチについて懸念を有している。理由としては、石油の比例配分割当を実施したとしても、他国および他州が追随するという保証はなく、さらにTRRCには割当実施のための人材やITシステムなどのリソースがないことが挙げられる。
  • クリスチャン委員長は、米国エネルギー省(DOE)との3月20日の電話会議で、米国が石油市場を安定させるための方策について協議した。その際、DOEは同委員長に対し、戦略的石油備蓄(SPR)の充填(じゅうてん)を開始するに当たり、DOEが3,000万バレルの初期買い取りを開始したことを、テキサスの石油生産者に通知するよう依頼した。

また、3月23日には米国連邦準備制度理事会(FRB)が、新型コロナウイルスによる株価急落対策として、投資適格社債を買い取る旨を発表した。しかし、デフォルト(債務不履行)リスクが高い、投資不適格のBB以下に格付けされたハイイールド債は買い取りの対象外で、これに依存するシェール石油生産者を救済する手立てはいまだみえない。

なお米国では、ハイイールド債を最も多く発行しているのはエネルギー関連企業で、その割合は11%に及ぶ。

(中川直人)

(米国)

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