初の市中感染受け大統領が緊急事態宣言

(フィリピン)

マニラ発

2020年03月11日

フィリピンのドゥテルテ大統領は3月8日、新型コロナウイルス(COVID-19)の国内感染の拡大を受け、緊急事態を宣言した。

フィリピン保健省(DOH)は3月6日に2件、7日に1件、8日に4件の計7件の新たな新型コロナウイルスの感染を確認。海外渡航履歴の無い感染経路不明の市中感染が含まれたことを受け、DOHはドゥテルテ大統領に対して緊急事態宣言の発動を求めていた。2月前半に感染が確認された3件を含めると、フィリピン国内の感染確認は10件となった。

緊急事態宣言の発動により、全ての政府機関と地方自治体は、感染拡大防止のために必要とされる対策を目的とした財政出動を行うこと(第2条)、DOH長官がフィリピン国家警察やその他の法執行機関の協力を得て新型コロナウイルスの感染拡大に必要な施策を行うこと(第3条)、全ての市民、居住者、観光客は更なる感染拡大を予防するために政府機関が発動する命令やアドバイスに従うこと(第4条)が求められる。大統領の緊急事態宣言を受け、マニラ市、ケソン市、パサイ市などマニラ首都圏などの自治体では、自主的に学校の休校を決定した。

また、DOHは中央政府、地方自治体、医療従事者が感染拡大に備え、医療体制を強化するため、3月7日にCOVID-19アラートシステムを5段階中3段階目(Blue)から2段階目(Red Sub-Level 1)に引き上げた。これにより、国内全ての医療従事者は、勤務先医療施設への出勤を義務付けられる。

経済対策として海外向けオンラインカジノの取り締まりを緩和

ドゥテルテ大統領は、新型コロナウイルスの感染予防対策費の財源を創出するため、適切な法人所得税を支払わずに違法営業を行う海外向けオンラインカジノ事業者(POGO)の取り締まりを緩和する意向を表明した(3月8日付インクワイアーなど)。POGOの多くは中国系企業によって運営されている。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、2月2日以降、中国からの入国が制限(2020年2月3日記事参照)される中、中国系事業者によるオフィス・住宅需要や税収入の落ち込みを防ぐための苦渋の決断だと報じられている。

(坂田和仁)

(フィリピン)

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