大統領、緊急演説で3月28日~4月5日を非労働日とすることを発表

(ロシア)

モスクワ発

2020年03月26日

プーチン大統領は3月25日、国民向けの緊急演説を行い、3月28日から4月5日の間を非労働日とすること、憲法改正を問う国民投票の延期、追加の社会経済対策措置などを発表した。ロシア国内で新型コロナウイルスの感染拡大が続き、経済にも深刻な影響が出始めていることが背景にある。

大統領は冒頭、「現状、感染拡大や死者の発生は抑えられている」としつつ、他国と同様、感染の拡大は避けられないと訴えた。この状況に鑑み、「国民の生命と健康を守ることを優先し、4月22日の憲法改正に関する国民投票は当面の間延期する」とした。また、感染拡大リスクを低減させる観点から、3月28日から4月5日までを、医療機関関係者、公務員、生活必需品の供給業者等を除き非労働日とするとした。明確に外出禁止とするものではないが、できるだけ外出を控えさせる狙いがあるものとみられる。

同時にプーチン大統領は、新型コロナウイルス感染拡大による景気悪化とそれに起因する社会不安への対策として、雇用や所得の安定確保を主眼とした社会政策、企業支援策も発表した。社会政策面では、a.退役軍人向け給付金の早期支給や住宅関連サービス等優遇料金の適用期間の延長、b.母子手当等の増額支給の前倒し、c.病気休暇中の給与額の引き上げ、d.所得が月額で3割以上減少した市民に対する借入金の返済猶予、が挙げられた。

企業支援策では、サービス業を中心とした中小企業(注)向けの支援を手厚くする。第一に、付加価値税を除く全ての税金を4月から9月まで免除する。マイクロ企業(注)に対してはこれに加え社会保険料も6か月間免除する。さらに、借入金の6か月間の返済猶予を認め、また返済遅延を理由に債権者が破産の申し立てをすることなどを禁じた。

従業員の給与の維持のための方策も提案した。具体的には、給与額の30%の社会保険料(労災保険を除く)のうち、最低労働賃金を上回る部分の税率を当面の期間15%に低減する。この減税分を活用し、雇用者に従業員の給与引き上げを求めた。

同時にプーチン大統領は、これら社会・経済政策向けの支出増を見越し、新たな財政収入源を求める考えも示した。例えば、国外向け配当への課税強化だ。一部の富裕層を念頭に「彼らが国外口座でロシアから得る配当に対する実効税率は2%」と、国内での個人所得税率(13%)と比較して不公平と指摘、これを是正していく考えを示した。また、ロシアで未導入の預金利息・投資収益課税を導入する考えも示した。

ただし、これらの政策については法令や関連規則の整備が必要なものもあり、実行に移るには時間がかかる可能性もある。

(注)中小企業は従業員数250人以下かつ年間売上高20億ルーブル(約28億円、1ルーブル=約1.4円)以下、マイクロ企業は従業員数15人以下かつ年間売上高1億2,000万ルーブル以下。

(梅津哲也)

(ロシア)

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