離婚合法化のための家族法改正法案が提出、女性の人権保護、社会進出が背景に

(フィリピン)

マニラ発

2020年03月03日

離婚を合法化するために家族法を改正する法案「下院第100号法案」が、フィリピンの今国会で審議されている。

下院第100号法案は序文において、離婚を合法としないフィリピンの家族法の規定のために、経済的、身体的に弱い立場にある多くの女性が離婚、再婚ができず、幸福で質の高い生活を送ることができずに苦しんでいるとし、離婚合法化の必要性を規定している。

フィリピンでは、2011年に女性の夜間労働が合法化され、2019年2月には産休を取れる日数を60日から105日に延長した産休期間延長法が成立するなど、女性の社会進出や人権を守る法整備の取組みが徐々に進んでいる一方で、フィリピン国家経済開発庁(NEDA)によると、フィリピンの女性の労働参加率は45.7%(2018年時点)と、ASEAN10カ国で最も低いとされる。アジアで最もひどい交通渋滞のために通勤時間が他国よりも長く、世話をする対象の家族や子供の人数が多いフィリピンの女性は、共働きがしにくいとみられる。

フィリピンの民間調査会社ソーシャルウェザーステーションズ(SWS)が2018年に発表した調査結果によると、フィリピンの国民の53%が離婚の合法化に賛成、32%が反対、15%がどちらとも言えないと回答、離婚の合法化に全ての国民が賛成しているわけではなく、特にカトリック教会を中心に離婚の合法化に対する根深い反対意見も聞かれる。

フィリピンのドゥテルテ大統領は2018年、離婚の合法化に否定的な立場を示している。なお、世界で離婚が違法とされる国は現在、フィリピンとバチカン市国の2カ国のみとされる。

(坂田和仁)

(フィリピン)

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