新型コロナウイルス感染が徐々に拡大、イベントの自主的延期・中止も

(オーストリア)

ウィーン発

2020年03月09日

オーストリアで新型コロナウイルスの感染が拡大している。2月25日に初の感染者が確認されて以来、徐々に感染者は増加し、3月4日午後5時45分時点(現地時間)で29人になった。これまでに3,138件の検査が実施されている。

感染者は北イタリア訪問で感染し、さらに2次感染したケースが多いが、いずれも軽い症状という。外務省は、北イタリアのロンバルディア州とベネト州の「レッドゾーン」指定市(2020年2月25日記事参照)に対して、「渡航中止・避難」を求める危険レベル5を既に発令している。

3月3日付「オーストリアン・ウィングス」誌によると、ウィーン空港は同日からイラン(イラン航空)と韓国(大韓航空)からの直行便の乗客に検温を実施し、質問票への記入を求めることなった。検温は2月に中国からの直行便の旅客に行っていたが、中国便の運航が停止されたため中止していた。

隣国スイスでは、感染者の拡大に伴って政府は大規模イベントの中止を決定(2020年3月3日記事参照)したが、オーストリア政府はまだこのような措置は取っていない。感染者が増大しているイタリアに関しても、感染拡大地域のみに渡航中止・避難を限定している。オーストリア赤十字の責任者ゲリー・フォイティク氏は国営ラジオ放送で、「イタリアはレッドゾーンの住人に対して移動制限を設けているため、オーストリア政府の措置は正当化できる。大規模イベントを中止することは今のところ賢明ではない」と述べた。

一方で、民間企業や団体の主催者は感染の拡大を憂慮し、イベントや会議を自主的に延期・中止する動きがある。毎年3月上旬にウィーンで開催される「欧州放射線学会(ECR)」は7月に延期を発表したばかりだ。2019年に医師や企業関係者3万人以上が訪れた大規模イベントのため、ウィーンの観光業界にとっても大きな痛手となる。

(田中由美子)

(オーストリア)

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