外交部、中国各地での外国人入境時の検疫・防疫措置を肯定

(中国、世界)

中国北アジア課

2020年03月03日

新型コロナウイルスによる肺炎(以下、新型肺炎)は、2月26日に中国以外の新規感染者数が中国を初めて上回って以降、中国の国外で感染者が急増している(2020年3月2日記事参照)。世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は3月2日、「24時間以内に中国国外で報告された新規感染者数は、中国国内の9倍近くだった」と指摘した上で、「韓国、イタリア、イラン、日本での流行が最大の懸念」と述べた。

韓国、日本などの周辺国での感染が拡大する中、中国の各地域において、海外からの渡航者に対する入国管理を厳格化する動きが広がっている(2020年3月2日記事参照)。

外交部は3月1日に開催された国務院の記者会見において、中央政府がこうした各地で取られる措置を肯定する立場を明確にした。

外交部領事司の崔爱民司長は、記者からの「外国人の入境に際し、海外との関係が密接な一部都市では、比較的慎重な感染予防・抑止措置が取られている。こうした措置について、中国側の全体的な考えは」との問いかけに対し、「中国の各地域における必要性に応じ、感染拡大が深刻な国・地域からの入境に際して、体温計測、自宅観察、指定施設での集中隔離などの検疫、感染予防・抑止措置が取られている。こうした方法は、中国の法律法規にのっとったもので、防疫対策として必要な措置だ」と答えた。

また、同氏は「中国の地方政府は、今後の感染拡大の状況を踏まえ、情勢に応じた措置をさらに調整していくだろう。われわれは外国人と中国国民を同等に扱い、差別なく適切な措置を実行していく」と述べ、今後さらに対策が強化される可能性を示唆した。

さらに同氏は、中国が講じてきた一連の措置は、感染のまん延・拡散の抑制に有効で、WHOからも高く評価されてきたと強調。中国国内での感染拡大が抑制されつつある中、「中国の防疫対策は最も重要な時期に突入しており、感染拡大が深刻な各国の皆様には、入国に際し十分ご理解の上、ご協力をお願いしたい」と協力を促した。

ビザ停止などの厳格な入境制限には慎重な姿勢

他方で、感染リスクの高い国・地域からの入境に対する、ビザの暫定停止を含めた制限措置の実施可能性について記者から質問を受けると、同氏は「防疫のためとして、一部の国々が中国国民に対し異なる程度の入境制限措置を実施している。ただし、大部分は専門的で科学的な適当な措置で、一部の過度なやり方に対してはわれわれも交渉を重ねてきた」として、過度な入境制限に対しては否定的な姿勢を示した。また、「海外の感染拡大状況を注視しながら、形勢変化に応じて関連国とコミュニケーション、協議を強化し、不要な旅行活動などは減らしていく。諸外国とともに、中国内外での人員交流および各分野における交流・協力が大きな影響を受けないよう保障する」と述べた。

このほか、在外の中国人の帰国支援に関しては、同氏は「感染者が比較的多くなっている韓国、日本、イタリア、イランなどの国には、華僑や留学生などが多く滞在しており、中国政府はその健康安全に非常に注意を払っている。今後の流行状況がさらに悪化した場合には、必要な措置を講じ、感染拡大が深刻な国・地域からの中国国民の帰国を支援する」との考えを示した。また、中国民用航空局飛行標準司の朱涛司長は、今後の流行状況の変化に応じ、必要な際には帰国支援のための臨時便やチャーター便を手配する構えだとした。

(小林伶)

(中国、世界)

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