女性の教育向上へ、新たな要職「女子教育特使」を設ける

(英国)

ロンドン発

2020年03月16日

英国のボリス・ジョンソン首相は3月5日、国際女性デー(3月8日)に先立ち、保守党議員のリズ・サグ男爵夫人(バロネス)を女子教育特使(Special Envoy for Girls’ Education)に任命したと発表した。女子教育特使は英国で新たに設けた役職で、貧困国のより多くの少女が学校教育を受け、質の高い教育から恩恵を享受できるよう支援を行う。

ジョンソン首相は、出生地にかかわらず全ての少女が12年間の質の高い教育を受けられるようにという、自身の外相時代に揚げた目標に首相就任後の初回演説であらためて言及しており、女性のエンパワーメントを優先事項の1つとして位置付けている。サグ特使は各国や国際機関と協調し、女子教育に関して野心的な目標の設定や投資を奨励するとともに、女子教育に関するジョンソン首相の目標実現のための政府トップを5年間務める。

英国政府は2019年9月に世界の子供たちの教育のために5億1,500万ポンド(約679億8,000万円、1ポンド=約132円)の支援を発表、その中で女子教育の提供は国家が経済的な成功を収める上で重要な決定要因になるとする見解を示している。過去4年間で英国の援助で教育を受けた1,430万人の発展途上国の児童のうち、女子は少なくとも580万人に上るとしている。2012年に政府が立ち上げたGEC(Girls’ Education Challenge)は世界最大の女子への教育促進に向けた国際的なプログラムで、2025年までに世界の最貧国17カ国で150万人の少女に教育の機会を提供する。

ビジネスでの女性活躍も進んでおり、経営への女性進出を図る国際的キャンペーングループ「30%クラブ」によると、FTSE100企業(注)における女性役員比率は、2010年時点で12.6%だったが、2018年9月に30%を突破、2019年9月にはFTSE350企業でも30%を達成するなど、ビジネスでの女性の活躍も推進している。

また、2017年4月からは従業員250人超の企業に対し、男女の賃金格差を毎年公表することを義務付けている。ジョンソン首相は企業への開示義務付けにより透明性を確保していると強調し、性別に関係なく同一労働には同一賃金が支払われるべきと発言した。

(注)ロンドン証券取引所に上場する時価総額上位100社 。同様にFTSE350は上位350社。

(近藤亜美、木下裕之)

(英国)

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