移動制限措置を強化、業界別追加支援措置の法制化を急ぐ

(フランス)

パリ発

2020年03月25日

政府は新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、3月17日に導入した移動制限措置(2020年3月19日記事参照)を強化する。エドアール・フィリップ首相が3月23日、テレビ局TF1のニュース番組「ル・ヴァントゥール(Le 20 heures)」に首相官邸から中継で出演し発表した。

具体的には、まず子供との散歩やスポーツのための外出について、1日に1回1人で(または子供と)、最長で1時間、自宅から1キロメートル以内の範囲に制限する。通院も緊急な場合に限るとし、外出時に携帯を義務付けられる自筆の外出証明書には3月24日から外出開始時間の記載を義務付ける。感染が広がれば、全国レベルで夜間外出禁止令の実施も検討する。夜間外出禁止令の実施も検討する。

違反行為への罰則についても3月24日施行の衛生緊急事態法外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの中で、135ユーロの罰金に加え(45日以内に支払わない場合は375ユーロに加算)、15日以内に再度違反した場合は1,500ユーロ、30日以内に複数回違反した場合は3,750ユーロの罰金と6カ月以下の禁固刑を追加した。

また、屋外の食料品市場(マルシェ)を禁止する。市民生活に欠かせない食料調達の場として、移動制限措置が出されてからも営業を認めてきたが、感染を防ぐために設けられた(1メートルの)対人距離を守れていないことなどから禁止に踏み切った。ただし、マルシェが最善もしくは唯一の(食料品購入)手段であるような小規模の市町村では、自治体の認可により例外的な営業を認めるとした。

首相はさらに、新たな経済救済措置についてオルドナンス(注)を25日に閣議決定し、今週中にも成立させる方針を示した。これに先立って、企業支援措置として法人税・社会保険料納付猶予、一時帰休制度の拡充や零細企業を対象とした支援金の支給などが盛り込まれた2020年度補正予算法が、3月20日に議会で可決されていた。今回の追加支援は新型コロナウイルス感染拡大で影響を受けた業界ごとに策定される。例えば旅行業界向けには、新型コロナウイルスの影響でキャンセルが発生した際、料金の払い戻しではなく18カ月以内に利用可能な同額のクーポン券への切り替えを認めるなど、資金不足による企業倒産を防ぐ措置を盛り込むとした。

移動制限措置が導入されてから3月24日で8日目を迎えたが、新型コロナウイルスの感染拡大のスピードは衰えていない。フランス公衆衛生局外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによれば、感染者数は24日午後2時現在で2万2,302人、死亡者数は1,100人だった。フィリップ首相は上述のテレビ出演時に移動制限措置は「さらに数週間続く」との見通しを示した。マクロン大統領は16日、移動制限は17日正午から少なくとも15日間実施すると発表していた(3月19日付記事参照)。4月以降も移動制限が続くものとみられる。

(注)憲法第38条に定められた政府の委任立法権限に基づく法規。政府はオルドナンスの概要を定めた授権法案を国会に提出し、承認された場合、オルドナンスの形式により法律を制定することができる。

(山崎あき)

(フランス)

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