米FRB、新型コロナウイルス感染拡大を受け臨時FOMCで0.5ポイントの緊急利下げ決定
(米国)
ニューヨーク発
2020年03月04日
米国連邦準備制度理事会(FRB)は3月3日、臨時の連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、政策金利のフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を、1.50~1.75%から1.00~1.25%に引き下げることを決定した(図参照)。定例会合は3月17、18日に予定されていたが、新型コロナウイルスの感染拡大などを受けて臨時会合を開いた。FOMCは2月28日に追加利下げを示唆する緊急声明文(2020年3月3日記事参照)を発表していた。
利下げは2019年10月(0.25ポイント利下げ)以来5カ月ぶり(2019年11月1日記事参照)で、今回の決定は全会一致だった。ジェローム・パウエル議長は記者会見で「経済見通しに対する新たなリスクに直面する中で、米国経済を力強く保つための措置」とした。
米国経済の見通しに対するリスクが大きく変化と判断
FOMCは声明文で、米国経済の現状について2月28日の緊急声明と同様に、「基盤は引き続き力強い」ものの、「新型コロナウイルスは経済活動にリスクをもたらしている」とした。パウエル議長は「既に旅行・観光業界には影響が出始めており、グローバル・サプライチェーンに依存する産業からも懸念の声が聞かれている」ことから、「(米国経済の)新たな課題とリスク」になっていると指摘した。
金融政策の判断については、「(米国経済に対する)リスクを考慮し、雇用の最大化と物価の安定という目標の達成を支えるための利下げ」とした。パウエル議長はまた「米国経済の見通しに対するリスクが大きく変化したと判断」しており、「経済をさらに支えるため、金融政策のスタンスを緩和した」と述べた。さらに、利下げが「感染率の低下や寸断されたサプライチェーンの修復につながるものではない」ことは十分理解しているが、「経済にとって有意義な後押しとなることを信じている」とも語った。
先行きについては、2月28日の緊急声明と同様に、「(新型コロナウイルスの)動向と経済見通しに与える影響を注意深く監視」し、「経済を支えるために、政策ツールを使って適切に行動する」とした。
ジョンズ・ホプキンス大学の経済学教授で、元FRBのエコノミストのジョナサン・ライト氏は「FRBは現在抱えるリスクに対峙(たいじ)するための政策手段をほとんど持っておらず、これは供給サイドの潜在的に大きなショックに対して用いるにはまったく適していない」と指摘し、「(FRBは自ら)持ち合わせている政策ツールを用いてできることをすべきとの見解に達したのだろう」と指摘した(「ブルームバーグ」電子版3月3日)。一方で、トランプ大統領は3月3日、ツイッターを通じて「FRBは利下げをしたが、さらに金融緩和をすべきであり、最も重要なことは、他国や競合国と(政策金利を)同じにする必要がある。われわれは公平な場でプレーしていない、米国にとって公平ではない」と述べた。
(権田直)
(米国)
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