新型コロナウイルス対応のため176億豪ドルの経済刺激パッケージを発表

(オーストラリア)

シドニー発

2020年03月18日

オーストラリアのスコット・モリソン首相は3月12日、新型コロナウイルスの感染拡大による国内経済への影響に対処するため、総額176億オーストラリア・ドル(約1兆1,792億円、豪ドル、1豪ドル=約67円)の経済刺激パッケージを発表した。オーストラリア経済はこれまで114四半期連続で景気後退(2四半期連続のマイナス成長)がなく成長を続けてきたが、新型コロナウイルスの影響によって2020年第1四半期の実質GDP成長率は少なくとも前期より0.5ポイント減少すると予測されており、モリソン首相は大規模な経済刺激策によって企業、家計、雇用を支える姿勢を示した。

今回の経済刺激パッケージは、事業投資支援、中小事業者へのキャッシュフロー支援、家計支援、大きな被害を受けた産業・地域に対する支援、の4本柱で構成されている。それぞれの主な支援策は以下のとおり。

事業投資支援について

  • 資産の即時原価償却基準額の引き上げ(「3万豪ドル」から「15万豪ドル」)と、売上高による利用制限の緩和(「年間5,000万豪ドル未満」から「年間5億豪ドル未満」)【7億豪ドル、2020年6月30日まで】
  • 減価償却控除の加速(売上高5億豪ドル未満の企業は購入年に資産コストの50%をさらに差し引くことができる)【32億豪ドル、2021年6月30日まで】

中小事業者へのキャッシュフロー支援について

  • 年間売上高5,000万豪ドル未満かつ従業員を雇用している企業に対して、最低2,000豪ドル~最大2万5,000豪ドル(経費の半額上限)の資金(非課税)を提供【67億豪ドル、2020年6月30日まで】
  • 中小企業が雇用する見習いまたは研修生の賃金の50%を補助(約12万人相当)【13億豪ドル、対象期間は2020年1月1日~同年9月30日まで】
  • 年金受給者、社会保障受給者、退役軍人等の収入補助受給の有資格者1人あたり、750豪ドル(非課税)の一時金を支給【48億豪ドル】

大きな被害を受けた産業・地域に対する支援について

  • 観光、農業、教育などの新型コロナウイルスによる経済的影響を強く受けている産業や地域に対する支援ファンドを設立し、企業が代替ビジネスとなる輸出市場やサプライチェーンを見つけるサポートなどを実施【10億豪ドル】

また、オーストラリア税務局は、新型コロナウイルスの影響を受けた納税者に対する税負担軽減措置を提供するほか、小規模ビジネス支援に特化した特別相談窓口を提供するため、観光産業で特に被害の大きいクイーンズランド州ケアンズに一時的な事務所を設置する予定。

モリソン首相は、「パンデミックによる経済的課題に比例した、タイムリーかつターゲットを絞った今回の経済刺激パッケージによって、最大650万人と350万社が支援を受けることができる」と述べ、「オーストラリアの家計を支え、消費意欲を高めるとともに、企業のキャッシュフローに対する圧力を軽減し、生産性向上のための投資を促進する」と力説した。

(住裕美)

(オーストラリア)

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