米USTR、ケニアとの貿易交渉開始意思を議会に通知、交渉に向けたパブコメ募集を開始

(米国、ケニア)

ニューヨーク発

2020年03月27日

米国通商代表部(USTR)は3月17日トランプ大統領の指示を受け、ケニアとの貿易交渉を開始する意思を議会に通知外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。「2015年大統領貿易促進権限(TPA)法PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」は、貿易交渉を開始する90日前までに、交渉開始の意思を議会に通知することを大統領に義務付けている。議会通知が行われたことで、2020年6月15日以降であれば、米国政府はケニアと貿易交渉を開始することが可能になった。なお、TPA法に基づき、米国政権は交渉開始30日前までに交渉分野・目的を公開することが義務付けられている。

また、USTRは3月23日、ケニアとの通商交渉に向けて、貿易協定に盛り込むべき内容に関するパブリックコメントの募集と公聴会の実施を官報外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで公表した。USTRがコメントを想定する分野は財・サービス貿易が中心だが、トランプ政権として初のアフリカ国家との貿易協定で、ルール分野の規律がどこまで盛り込まれるかについても注目される。

USTRは、米国の交渉目的や優先事項を検討する目的で、4月15日までパブリックコメントを募集する(注)とともに、4月28日に公聴会を実施する。USTRは重点的にコメントを受ける分野について、品目ごとの交渉目的や両国間の財・サービス貿易に関する障壁などを例示している。USTRはこれら分野以外のコメントも受け付けるとしているが、列挙されたのはいずれも財・サービス貿易に関するもので、知的財産や電子商取引などのルール分野は挙がっていない。他方、TPA法は、議会承認を要する貿易協定について上記のルール分野を盛り込むべき旨を明記しており、2019年11月に開催された米国ケニア間の貿易投資に関わる事務方の会合でも、デジタル貿易や知的財産、環境、労働、国有企業などが議論されたとの報告がある。また、ロバート・ライトハイザーUSTR代表は以前に、ケニアとの貿易協定を今後のアフリカ諸国との協定モデルとするため、「包括的かつ高い水準の貿易協定」を目指すと述べている(2020年2月14日記事参照)。

戦略国際問題研究所(CSIS)のジャック・カポラル準研究員は、米国が包括協定を目指す場合、ケニアの児童労働や環境保護、同国が加盟する東アフリカ共同体(EAC)の対外共通関税などの課題が、協定上いかに規律されるかが争点になる、と指摘している。

(注)パブリックコメントは、米国連邦政府のポータルサイトregulations.govのドケット番号がUSTR-2020-0011外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますにおいて提出が可能。

(藪恭兵)

(米国、ケニア)

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