欧州自動車部品工業会、ブレグジット後の状況めぐる意見書公表

(EU、英国)

ブリュッセル発

2020年03月02日

欧州自動車部品工業会(CLEPA)は2月27日、英国のEU離脱(ブレグジット)以降の英国とのパートナーシップ関係構築に関する意見書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を公表した。CLEPAとして、2020年末までを移行期限として交渉が始まる自由貿易協定(FTA)に無関税の貿易や最大限の市場アクセス、公正な競争条件を確保するため、自動車関連の付属書を含めることを提唱。特に原産地規則の関係では、EU・英国間の累積にとどまらず、日本や韓国などを加えた多国間累積制度の導入を求めた。また、毎日1,100台のEU加盟国からのトラックが4,870万ユーロ相当の部品を英国の車両生産拠点に搬送している現状にも触れ、今後の合意形成に失敗した場合のリスクに対する警戒感を示した。

CLEPAは今回の意見書の中で、欧州自動車産業を「EUと英国の共有産業資産」と位置付け、その国際的な競争力を2020年末までの極めて限られた時間軸の中で拙速な通商合意の犠牲にしてはならないと強調している。また、自動車産業の権益を守る交渉の失敗が数十万単位の雇用や生活を危機にさらし、EUと英国双方に多大な悪影響を及ぼすと警鐘を鳴らした。

CLEPAが今後の交渉に求めるポイントは以下のとおり。

  • 現在、EU・英国に適用されている自動車産業関連の規制・基準などの制度的継続性を担保すること。新たな非関税障壁を回避し、EU・英国の経済統合持続に伴う規模の優位性を維持、欧州自動車産業の競争力を守ること。
  • 高度に統合されたEU・英国の自動車産業のサプライチェーンの断絶を回避し、個別事情に応じた貿易条件と代替的通関手続きを導入すること。
  • 欧州自動車産業に対する世界の顧客の信頼感を損なうサプライチェーンの断絶を回避することを念頭に、車両のモデルサイクルを考慮した、移行期間終了後に対応するための段階的な導入期間を前提とする実現可能な行動計画(タイムライン)を確保すること。

日本や韓国についても累積原産対象化を提唱

このほか、原産地規則の関連では、「(EU・英国間の)完全な2国(地域)間の累積と自己証明(制度)が貿易障壁を低減させる」と提唱。原産地に関する自己証明制度導入による通関手続きの簡素化を求めた。また、CLEPAは、英国が日本や韓国、中国、中東など欧州域外市場への輸出拠点として、年間170億ユーロ相当の完成車を当該市場に輸出、またこれにより、30億ユーロ相当のEUから英国への自動車部品輸出に貢献している点も強調。EUと英国間の累積だけではなく、日本や韓国、地中海沿岸の国々も含めた多国間(マルチラテラル)の累積原産の導入を提唱している。

なお、欧州委員会のミシェル・バルニエ首席交渉官は2月27日付のツイッターで、英国政府が同日明らかにした今後の交渉方針(2020年2月28日記事参照)について、「われわれ(EU)は(離脱協定に添付された)政治宣言に盛り込まれた全てのコミットメントを重視する。今後の英国との野心的で公正なパートナーシップ構築を求める」と投稿した。

(前田篤穂)

(EU、英国)

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