2019年の貿易赤字は15%減の370億ドル、輸出が過去最高を記録

(フィリピン)

マニラ発

2020年03月09日

フィリピン統計庁(PSA)は2月11日、2019年の貿易収支が370億4,914万ドルの赤字となり、過去最高の貿易赤字(435億3,342万ドル)を記録した2018年から赤字幅が14.9%(64億8,428万ドル)縮小したと発表した。

赤字幅縮小の要因として、2019年度の国家予算の成立が想定より3カ月半ほど遅れたことによりインフラプロジェクトを含む各種公共事業が停止し、機械や鉄鋼、燃料などの輸入がその期間減少したことや、米中貿易摩擦と中東情勢の緊迫化など世界経済の先行きが不透明化なものの、フィリピンの輸出産業への影響は限られたものとなり、輸出が1.5%増となって過去最高額を記録した点が挙げられる。

2019年のフィリピンの輸入額は1,073億7,474万ドルとなり、前年の1,128億4,085万ドルから4.8%減少した。特に、輸入額全体の26.2%を占める電子製品の輸入額が1.9%減、11.9%を占める鉱物燃料、潤滑油、関連物質が8.7%減、10.2%を占める輸送機器が7.3%減、5.8%を占める産業機械・設備が6.9%減となるなど、輸入額のトップ4位までの品目がいずれも減少に転じたことが輸入減につながった。

表1 フィリピンの輸入統計

一方で、2019年のフィリピンの輸出額は703億2,560万ドルとなり、前年の693億743万ドルから1.5%増加した。特に、輸出額全体の56.9%を占める電子製品の輸出額が4.4%増となり、中でも電子製品の輸出額の73.6%を占める部品/デバイス(半導体)が4.2%増となったことが輸出全体を押し上げた。そのほか、輸出額全体の3.2%を占める自動車、航空機、船舶用配線が8.2%増、2.7%を占めるバナナが39.7%増となった。

表2 フィリピンの輸出統計

輸出先を国・地域別でみると、首位は前年に引き続き米国で114億5,667万ドル(7.7%増)となり、全体の16.3%を占めた。ただ、2020年の両国の関係に暗雲が立ち込めている。フィリピン政府は2月11日、米国との訪問部隊地位協定(VFA)の破棄を在フィリピン米国大使館に通告。2020年中にも本格交渉の開始を見込んでいた米国とフィリピンの自由貿易協定(FTA)の交渉にも影響があることは必至だ。2位は前年に引き続き日本で106億2,915万ドル(3.0%増、シェア15.1%)となり、3位以下は中国が96億2,861万ドル(9.2%増、シェア13.7%)、香港が96億2,143万ドル(0.6%増、シェア13.7%)、シンガポールが38億2,515万ドル(11.4%減、シェア5.4%)となった。いずれの国・地域も新型コロナウイルスや米中貿易摩擦といった経済へのマイナス要因を抱えており、2020年のフィリピンの輸出額の行く末が案じられる。

輸入元を国・地域別でみると、首位は前年に引き続き中国で245億3,569万ドル(11.5%増)となり、全体の22.9%を占めた。中国からの輸入品は安価な日用品からインフラ資材まで多岐にわたり、フィリピンにとって最大の貿易赤字を抱える輸入相手国だ。2016年のドゥテルテ政権発足以降、フィリピンと中国は政治、経済の両面で関係を深化させており、中国のODA供与総額は5,150億ペソ(約1兆300億円、1ペソ=約2円)とされ、潤沢な支援と引き換えに中国は領土問題でフィリピンに対して譲歩を求めている。輸入元の2位は前年に引き続き日本で101億1,285万ドル(6.4%減、シェア9.4%)、3位以下は韓国が82億2,931万ドル(27.2%減、シェア7.7%)、米国が77億2,374万ドル(4.2%減、シェア7.2%)、タイが67億6,204万ドル(13.2%減、シェア6.3%)となるなど、中国を除いて軒並み減少した。

表3 フィリピンの貿易額上位10カ国・地域

(坂田和仁)

(フィリピン)

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