米FRB、臨時のFOMCを開催、1.0ポイントの追加利下げとFRBによる資産購入拡大を決定
(米国)
ニューヨーク発
2020年03月17日
米国連邦準備制度理事会(FRB)は3月15日、臨時の連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、政策金利のフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を、1.00~1.25%から0.00~0.25%に1.0ポイント引き下げることを決定した(図参照)。3月17~18日に予定されていた次回定例会合を中止した上で、3月3日に続く臨時会合を開催した。ジェローム・パウエルFRB議長は電話記者会見で、今回の決定について「米国経済全体がこの困難な時期を乗り越え、新型コロナウイルスによる(経済的)混乱の収束の後、正常な状態へより力強く戻ることを促す」ための措置だとした。
利下げは、3月3日(0.50ポイントの引き下げ)(2020年3月4日記事参照)以来となる2020年2回目で、今回の決定は9対1の賛成多数だった。反対票を投じたのは、クリーブランド連銀のロレッタ・メスター総裁で、今回の会合では0.5~0.75ポイントの利下げにとどめるべきと主張したとされる。
FRBによる7,000億ドルの保有資産額拡大も決定
FOMCの声明文では、「新型コロナウイルスの影響は、短期的には経済活動に重くのしかかり、経済見通しにリスク」をもたらしており、「米国経済が最近の出来事を乗り越え、雇用の最大化と物価の安定という目標を達成する軌道に乗っていると確信するまで政策金利を維持する」とした。パウエル議長は「家計・企業に対する与信の流れや(経済全体の)需要(拡大)を金融政策によって支援し、可能な限り力強く回復するよう、われわれにできることをやる」と述べた。
今回のFOMCでは、FRBによる7,000億ドルの保有資産額拡大も決定された。声明文によると「今後数カ月にわたって、国債保有額を少なくとも5,000億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)を少なくとも2,000億ドル増やす」とした。さらに、家計や企業に対する与信の流れを支援する措置(注1)や、米ドルの流動性供給を高めるための中央銀行による協調措置(注2)も決定された。パウエル議長はFRBには「フォーワード・ガイダンス(注3)や(追加の)資産購入、これら政策を調節する余地が十分に残っている」とする一方で、新型コロナウイルス対応には「まず財政政策が必要で、影響を受ける産業、労働者に直接手を差し伸べる」ことができるとし、財政政策の重要性を強調した。
投資顧問会社MKMパートナーズの市場ストラテジスト、マイケル・ダーダ氏は「FRBは(追加利下げや資産購入といった)行動を取らざるを得なかった」と述べ、「もし(行動せずに)待っていたら、重大な過ちになっていただろう」と指摘した(「ブルームバーグ」電子版3月15日)。
(注1)金融機関が利用するFRBの窓口貸出(ディスカウント・ウィンドウ)金利の引き下げなどが含まれる。
(注2)各国通貨と交換でドル資金を供給し、マーケットのドル不足に対応する仕組み(ドル・スワップ・ライン)の利用コストの引き下げなどが含まれる。
(注3)中央銀行が金融政策の先行きを明示する指針を示し、市場参加者などの予想や期待に働き掛けることで、長期・短期の市場金利などに影響を及ぼし、金融緩和の効果を高める政策手段のこと。
(権田直)
(米国)
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