新型コロナウイルス感染者急拡大のエジプトは集会を制限、観光業への影響に懸念

(エジプト)

カイロ発

2020年03月11日

エジプトの新型コロナウイルス感染者は3月2日まで2人だったが(2019年3月6日記事参照)、3月9日時点の現地報道によると、外国人来訪者20人以上を含む55人まで急拡大している。特にルクソールとアスワン間のナイルクルーズの船内で一気に45人以上に感染が拡大したことが確認された。これを受けて、モスタファ・マドゥーリー首相は9日、大規模イベント・集会を制限する方策を打ち出した。この方策により、エジプトにおけるビジネスが少なからず影響を受けることが懸念される。

各国報道では、フランス、日本など第三国において、感染経路や感染時期は明確ではないものの、エジプト渡航歴のある感染者が見つかるケースも出ている。湾岸諸国では、サウジアラビアやバーレーンでエジプトへの渡航停止や滞在歴のある者の入国制限、クウェートではエジプトからの渡航者に対し渡航前検査要求の開始という報道もあり、状況は日々流動的なため、最新情報に留意が必要だ。エジプト側の入国においては、引き続き中国との直行便は運休となっているが、カタール国籍以外の渡航者に制限はかけていない。

当地の日系団体・企業では、イベントを中止したり、出張を自粛したりする動きが見られる。3月18~27日に開催予定のエジプト最大のカイロ国際見本市は、主催者によると、海外8カ国程度からの出展が相次ぎキャンセルになったという。

ハラ・ザイード保健・人口相が3月2日に中国を訪問し、ウイルス検出器の寄贈を受けたこともあり、検査体制は整いつつある。入国の際に検温や調査票記入を実施しており、3月10日からは感染の有無が迅速に確認できる検査器具が設置される。濃厚接触者の隔離人数は報道されていないが、外交筋によると、政府による濃厚接触者の隔離は多数に上るとの情報もある。

3月8日の現地報道では、エジプト初の新型コロナウイルス死亡事例は欧州からの観光客で、そのほかにも外国人観光客の感染者の事例もある。そのため直行便が運休している中国人観光客の減少に加え、欧州からの観光客の減少が予想され、湾岸諸国とエジプト間での出入国制限の動きも出てきているため、主要産業である観光業への悪影響が予想される。エジプトの貿易では、中国からの輸入額が1位になっており、中国の工場の稼働停止が続くと、今後の輸入品供給について懸念の声もある。

在エジプト日本大使館は、ウエブサイトで「エジプトにおける新型コロナウイルス関連情報外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を公開している。

(井澤壌士)

(エジプト)

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