大和合金、特殊銅合金加工を強みに欧州販路拡大を狙う

(ポルトガル)

マドリード発

2020年03月06日

大和合金(本社:東京都板橋区)は、特殊銅合金の加工・販売を行い、開発と製造を担当するグループ企業の三芳合金工業とともに、開発から販売まで一貫して行う体制を持ち、特殊合金素材というニッチな業界で世界No.1を目指している。大和合金は2019年9月、ポルトガルのポルト市に初の海外支店を開設した。ジェトロは2月24日、両社の代表取締役社長を兼ねる萩野源次郎氏に、欧州市場への取り組みについて聞いた。

欧州市場へのゲートウエー

2019年度の売上高は、大和合金が60億円(2019年3月期)、三芳合金工業が46億円(2019年9月期)。両社は計141人の従業員を抱え、溶解からの一貫生産を行い、多品種少量で短期納期に対応する開発型企業グループだ。自動車、航空機、船舶、金型、機械、半導体、光ファイバー海底ケーブル、家電、鉄鋼向けと、同社の製品は多岐にわたり、売り上げ品目のトップは全体の30%を占める半導体関連だ。「失うものは何もない。どんなにわずかな注文も受ける」というチャレンジ精神で、海外の展示商談会に積極的に出展し、2007年から航空機産業素材の輸出に向けた顧客開拓を開始した。2008年には、日本、米国、欧州、ロシア、中国、インド、韓国による国際協力プロジェクトである次世代エネルギーの国際熱核融合実験炉(ITER)への材料供給に参画し、水冷却用の銅合金素材の品質が認められたことが大きな自信となった。

大和合金の輸出量は、当初はごくわずかだったが、2019年には20倍になり、2020年は前年比25%増を目標としている。ともに航空機業界の1次サプライヤー(Tier1、ティアワン)であるドイツ企業とフランス企業への納入を、それぞれ2017年と2019年に開始するに至った。

ポルトガルへ進出した目的は、欧州における航空機部品用材料の市場開拓と、現在フランスで進められているITERへの対応だ。とりわけ航空機部品産業向けは、同社の輸出額の約70%を占める主力分野で、エアバス、ボーイングに次ぐ航空機メーカーであるブラジルのエンブラエルのポルトガル工場があること、ポルトガル政府が航空産業誘致に積極的なことが弾みとなった。加えて、金型の製造技術を生かし、プラスチック成形用金型材料の拡販も期待できると考えた。

外国人インターンシップを活用

大和合金は、外国からのインターンシップを受け入れており、リスボン駐在員を務めるブラジル出身のペドロ・テイシェイラ氏も、JETプログラム(外国青年招致事業)で来日し、岡山県で教員として勤務経験のある元インターンだった。萩野社長は、勤勉かつ日本語に堪能で、目的意識が明確でハングリー精神の強い外国人インターンの存在が、社内全体に刺激を与えていることに満足している。

今後の新規ビジネスの開拓に関して、銅は熱や電気を伝えやすいことに加えて、水素による悪影響を受けない特性があることから、水素関連の研究所から共同研究への参加要請を受けており、新たな分野でのビジネス展開の可能性に期待が膨らむ。

(小野恵美)

(ポルトガル)

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