原油価格(WTI)が再び下落、20ドル割れ寸前

(米国)

ヒューストン発

2020年03月19日

原油価格(WTI)は下落を続け、3月18日の終値は1バレルあたり20ドル割れ寸前の20.37ドルで終えた。このようにWTIが20ドル前半の価格で推移するのは2002年2月以来となる。

世界最大の生産量を誇るサウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコは、原油供給量を日量970万バレルから4月には日量1,230万バレルに、今後さらに日量1,300万バレルまで増やす考えを発表している(同社プレスリリース3月11日)。

また、サウジアラムコが3月17日に公表した2019年の年次報告書では、同社の原油生産コストは世界でも最も低いレンジであるとし、世界平均の4.7ドルに対し、同社は2.8ドルであることを公表している。

また同社のアミン・H・ナセル最高経営責任者(CEO)は、アラビアン・ライト原油が1バレル30.24ドル(3月6日時点では52.44ドル)で取引された16日時点で「サウジアラムコは1バレル30ドルでもとても快適である」と述べており、原油市場価格はさらに下がる可能性がある(ロイター3月16日)。

サウジアラビア産原油については、現在の日量970万バレルから1,300万バレルまで増産して、全てがアラビアン・ライト原油価格の1バレル30ドルで取引されると仮定すると、

増産前売上額:9.70(100万バレル/日)×52.44(米ドル/バレル)=508.70(100万ドル)

増産後売上額:13.00(100万バレル/日)×30.00(米ドル/バレル)=390.00(100万ドル)

508.70-390.00=118.7(100万米ドル/日)

となり、一日当たりの売上額は23.3%減の1億1870万ドルとなり、当然ながら利益も減少する。

このようにサウジアラビアが増産して原油価格下落を誘導するのは、当面の売上額・利益の増加を意図したものではないことは明らかである。

これが欧州への原油供給増大を狙うサウジアラビアが、原油価格の引き下げと増産でロシアに対して価格「戦争」を仕掛けていると言われる理由の一つである。

打撃を受けるのはロシアだけではない。現状の原油価格低迷を受けて、米国の油田サービス会社のハリバートンは、ヒューストン本社の3,500人の従業員について、当面の2カ月間は交互に1週間働き、1週間を無給休暇(健康保険などは支給)とする体制にすると発表した。

今後も、新型コロナウイルス感染拡大の影響による航空燃料、ガソリンの需要低下、外出禁止や在宅勤務などによる消費の減退から、原油市場価格はさらに下がる可能性があり、米国経済への影響拡大が懸念される。

(中川直人)

(米国)

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