解雇は最終手段、新型コロナウイルスで賃金ガイドラインを前倒し勧告
(シンガポール)
シンガポール発
2020年03月31日
政労使の代表で構成する全国賃金評議会(NWC)は3月30日、2020/2021年度(2020年7月1日~2021年6月30日)の賃金ガイドラインを発表した。新型コロナウイルスで打撃を受けた企業に対し、解雇は最終手段とするよう勧告した。NWCの賃金ガイドラインは例年、5月に発表されるが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う景気の急速な悪化を受けて前倒しでの発表となった。
NWCはガイドラインの中で雇用主に対し、ビジネスを維持し雇用を守るためにも、以下を考慮するよう勧告した〔優先度は1.~4.の順〕。
- 給与以外のコスト削減と、余剰人員のあらゆる活用方法の検討。
- ビジネス、給与コストを削減するために政府支援の活用と、経営、労働変革の推進。
- 給与の削減。
- 最終手段として解雇に踏み切る場合には、政労使のガイドラインに基づき責任ある方法で実施。
NWCは人材省、全国労働組合会議(NTUC)、シンガポール国家雇用者連合(SNEF)や外国商工会議所などの代表で構成され、景気や雇用市場の動向、経済見通しなどを勘案して、その年の賃金改定の指針となるガイドラインを毎年発表している。ガイドラインは、幹部、専門職、技術者、一般社員と全ての労働者に対し、組合・非組合問わず適用される。
同評議会は新型コロナウイルスで経営の打撃を受け、先行きが不透明な場合には「給与削減に踏み切っていいが、その場合には幹部が先に模範を示すべき」と述べた。また、従業員の月給額の維持が難しい場合には、業績に応じて変動可能な可変給の調整の検討を求めた。さらに、可能な限り、年間給与補助(Annual Wage Supplement=AWS、13カ月目の給与)を支給するよう努力し、給与を削減する際には国民、外国人双方にとって公平であるべきだと勧告した。
NWCの勧告の全文は人材省のウェブサイトを参照。同評議会は経済状況が急速に変化していることから、必要であれば評議会を再招集してガイドラインを見直すとしている。
同国で3月30日までに確認された新型コロナウイルスの感染者は累計で879人(うち、228人が回復、19人が重篤者、3人が死亡)となった。貿易産業省は3月26日、国内外の経済環境の悪化を受けて2020年通年のGDP成長率予測を、「前年比4.0%減~1.0%減」へと下方修正していた(2020年3月26日記事参照)。
(本田智津絵)
(シンガポール)
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