タイ憲法裁判所、新未来党に解党命令

(タイ)

バンコク発

2020年03月03日

タイ憲法裁判所は2月21日、下院の議員数で3番目に大きい新未来党(代表:タナトーン・ジュンルンアンキット氏)(注)に対し、解党を命じた。

本決定により、同日付で新未来党は解党され、タナトーン氏を含む同党幹部16人(うち、下院議員は11人)は以後10年間、国政への被選挙権が失われ、新たな政党の参加などの政治活動もできなくなる。また、幹部以外の同党所属議員は、30日以内に他党へ合流する必要がある。

憲法裁判所の判決は以下のとおり。

  1. 政党は公的機関で、法律で許可されていない事項については当然に禁止される。
  2. 同党は、異常ともいえる低利で多額の資金を調達できたことによる利益供与を受けた。
  3. 同党幹部は、寄付金およびそれに付随する便益に対する違法性を当然に認識していた。または当然に認識すべきだった。

解党命令に至るまでの経緯

2019年12月、選挙管理委員会は「タナトーン氏が新未来党に対し、総選挙のための資金1億9,000万バーツ(約6億4,600万円、1バーツ=約3.4円)を貸し付けた」として、憲法裁判所に解党を申し立てた。タイの政党法は貸付金を政党の財源として認めていない。寄付金であれば、政党の財源として認められるものの、年間1,000万バーツが上限に定められており、いずれにせよ今回の資金提供は政党法に違反する行為とみなされていた。

新未来党は、2019年の民政移管後も、政治に対し一定程度影響力を保持する軍に不満を持つ若者などから支持されている。この判決を受けて、抗議行動などが活発化する可能性がある。

(注)新未来党:2019年3月24日総選挙の実施数カ月前に結党。改革派で、ソーシャルメディアなどを通じて党の政策を有権者に浸透させた。支持者の多くは若年層。反軍政の立場を明確にし、野党に加わった。下院で80議席を有し、野党第2党の勢力を誇っていた。

(岡本泰、ナオルンロート・ジラッパパー)

(タイ)

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