タンザニアで新仲裁法を公布、外資企業も今後の運用に注意

(タンザニア、ケニア)

ナイロビ発

2020年03月23日

タンザニアで2月21日、新しい仲裁法(Arbitration Act, 2020)が公布された。国際仲裁の合意があるときでもタンザニアの裁判所が介入できる場合を定めており、日本を含む外資企業は注意が必要だ。

仲裁は紛争解決手段の1つで、裁判所ではない第三者の仲裁人に紛争の解決を委ねることで、非公開性を保つことができ、裁判よりも早期の解決が期待できる。国際的なビジネス案件の増加に伴い、外国企業との売買契約やライセンス契約、請負契約などに利用される仲裁件数も増加している。

他の法令が仲裁地をタンザニアに定める場合(例えば、資源利用事業や官民連携事業)を除き、今回成立した仲裁法に、紛争の仲裁地をタンザニアに定めるような強制力があるわけではない。

同法によると、仲裁合意があるにもかかわらず当事者が訴訟を提起した場合、仲裁合意が無効である場合などを除き、裁判所は被告の申し立てにより訴訟の手続きを停止しなければならない。しかし、タンザニアの裁判所が仲裁合意の有効性を尊重する立場を取るかどうかは、今後の運用を見守る必要がある。

タンザニアの当事者を相手方とする国際仲裁で有利な判断が得られた場合には、タンザニアでの執行を求めることが可能だ。ただし、仲裁廷が管轄(権限)を欠くなどの理由で、タンザニアの裁判所が仲裁判断の執行を認めないこともあり得る(68条など)。

また同法は、タンザニアでの仲裁センターの設置を定めている。一般的に、仲裁センターの設置はビジネスの誘致につながるとされる。主要な仲裁機関には、ロンドン国際仲裁裁判所(LCIA)、シンガポール国際仲裁センター(SIAC)、香港国際仲裁センター(HKIAC)などがあり、アフリカではケニアやルワンダ、LCIAの支援を受けたモーリシャスなどが仲裁センターの設立に取り組んでいる。ただし、仕組みの整備や運用が十分に進んでいない段階で利用を強いられる可能性などもあり、動向には注意を要する。

同法は国会での審議を経て、2月14日にジョン・マグフリ大統領が署名、2月21日にオーガスティン・マヒガ憲法司法相が官報で公布した。施行日は官報での通知により指定する日とされており、現状では不明だ。

(久保唯香)

(タンザニア、ケニア)

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