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EUとの相互承認協定の締結見通し立たず、スイス医療機器業界が混乱

(スイス)

ジュネーブ発

2020年03月03日

スイスは、EUと製品規制についての相互承認協定(MRA)を2002年に締結し、EU市場との自由な流通を確保してきた。これが失効の危機にあることで、スイス医療機器業界が混乱に陥っていることが報道されている。

2020年5月26日から、EUの医療機器指令(MDD)が欧州医療機器規制(MDR)PDFファイル(431KB)に移行されることから、スイス側としては医療機器政令(MedDO 812.213)を2019年6月に改正し、MDR適合に必要な規制強化を行っていた。しかし、EU側の規制体系が変わるため、スイスとEUとの間でMRAの再締結が必要なこと自体が外交上の取引材料になってしまった。2019年6月末当時、スイスにおけるEU企業株式の取引にEU金融規制上、スイスの証券取引市場がEU市場と同等の安全性を持つという同等性認定が更新期限を迎えていた(2019年6月17日記事参照)。制度的条約締結の見通しは結局立たず、同等性認定も失効したが、金融市場監督庁は逆にスイス企業のEU域内での株式取引を制限し、これら取引をチューリヒ証券取引所に誘導したことから、同取引所は取引総額をなんとか確保し、今に至っているという出来事があった。今回のMRAは、それに続く制度的条約締結の取引材料とされているにもかかわらず、協定締結の見通しがたっていないということだ。

このMRAが締結されなければ、スイスで生産された医療機器がスイス国内規制をクリアしていても、EUに輸出するに当たり適合性評価機関における適合性検査をあらためて受けることが必要となる。業界団体メドテックは、最悪の事態に備えた規制対応を進めるように会員企業に周知を始めているが、既に再検査を嫌ってハンガリーに工場を移転する企業が出ているとの報道もある。医療機器の適合性評価を行うことを認められた機関は少なく、このままではMDR適合性評価を受けるためにはEU域内の認定認証機関を探す必要が出てくる。スイス国内の適合性評価機関が新たに認定を求めているが、EU当局の対応は遅く、スイスからEUへの医療機器輸出が実質的に行えなくなる事態が懸念されている。スタートアップに対する影響は既に出ている。スイス全体で2019年のスタートアップ投資額〔全体22億9,000万スイス・フラン(約2,564億8,000万円、1フラン=約112円)〕が対前年比で約86%増加した中、メドテック分野のみが対前年比41%減の7,220万フランにとどまっている(スタートアップ・ティッカー調べ)。

業界団体スイスメム、メドテックからは累次の制度的条約締結を求めるコメントが出されているが、規制内容自体を問題視する声はない。メドテックによれば、スイス医療機器業界は、5.8万人を雇用しており,年販売額は158億スイス・フランで、そのうち輸出額は113億フランに上り、スイスGDPの2.3%を占める産業であることから、MRA失効の影響は大きい。

(和田恭)

(スイス)

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