飲食業界における食用大麻の可能性について議論、カナダ食品見本市

(カナダ)

トロント発

2020年03月17日

カナダで最大の食品見本市「RCショー」で3月2日、2019年にカナダで解禁となった食用大麻が今後、飲食業界で使用可能となった場合の展望について、パネルディスカッションが開催された。

食品マーケットリサーチを手掛けるNPDグループの飲食産業アナリスト、ビンス・スガベロン氏は、大麻の消費者層について触れ、カナダ人の約17%は大麻消費者(カナダ統計局調べ)と指摘。また、カナダの大麻市場は45億カナダ・ドル(約3,420億円、Cドル、1Cドル=約76円)と想定されるものの、現状では飲食産業での大麻提供は認められていないため、認められた場合の伸びしろは大きい、と語った。また、大麻消費者は非消費者と比べてファストフードの利用率が高く、朝食や夜食にも外食を利用し、オンラインで発注する傾向が高いことから、こうした特性を生かした商材の開発が有効だ、と説明した。

写真 プレゼンを行うNPDグループ飲食産業アナリストのビンス・スガベロン氏(ジェトロ撮影)

プレゼンを行うNPDグループ飲食産業アナリストのビンス・スガベロン氏(ジェトロ撮影)

写真 飲食産業での食用大麻の可能性について議論する登壇者たち(ジェトロ撮影)

飲食産業での食用大麻の可能性について議論する登壇者たち(ジェトロ撮影)

また、ヒル・ストリート・ビバレッジ・カンパニーの最高経営責任者(CEO)、テリー・ドナリー氏は、カナダではアルコールへの大麻添加は禁止されているため、同社が大麻入りのノンアルコール・ワインやビールの開発を行っていることを紹介した。

一方、ミンデン・グロス法律事務所のホイットニー・アブラムズ弁護士は、飲食業界での大麻使用のハードルは高い、と指摘する。カナダでは、大麻や大麻入り加工品の製造業者は大麻法(Cannabis Act)の規定にのっとって商品をパッケージする必要がある。レストランで提供するメニューに大麻を添加した場合も「大麻入り加工品」の製造とみなされるため、規定に則って包装し、ラベルを貼る必要などがあるため、実質的にはレストランでの販売はできない状況だ。

なお、オンタリオ州政府は2月10日から、州内のラウンジやカフェ、野外フェスティバルなどの特別イベントにおける、大麻販売・使用に対する意見聴取を開始している。

レストラン経営者の側からは、飲食産業における大麻解禁が新たな需要拡大につながると期待されるものの、未成年者の誤食防止策などを含めた連邦や各州レベルでの法的な整備については、まだ検討の時間を要するものとみられる。

(飯田洋子)

(カナダ)

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