齋栄織物、高級アパレルブランド向けテキスタイル輸出で日EU・EPAを活用

(EU、日本)

欧州ロシアCIS課

2020年03月17日

齋栄織物は、薄手の絹の産地である福島県川俣町で1952年に創業し、2012年にものづくり日本大賞の内閣総理大臣賞を受賞した、世界一薄い先染絹織物「フェアリー・フェザー(妖精の羽)」などの企画、製造、販売を手掛ける。ジェトロは、同社の齋藤泰行代表取締役と齋藤栄太常務取締役に、欧州でのビジネス展開と日EU経済連携協定(EPA)の利用について聞いた(2月20日)。

同社の売上高に占める海外の比率は2018年度に約40%で、地域別には工業用資材の需要が安定している米国(20~25%)、欧州(10%程度)が大きい。欧州の主な顧客は高級アパレルブランドだが、コレクションごとのコンセプトに合えば受注できるため、取引相手と受注量の変動は激しいという。商談には、常に新作を持参する。昨今は薄く、軽く、凹凸や表面効果が施されたテキスタイルがトレンドで、フランスのリヨンやイタリアのコモといった欧州のほかの絹産地が製造していない、同社の凹凸感のある3Dシルクのテキスタイルは、シャツやジャケット用に人気だ。ここ2年は環境や持続可能性に配慮した素材(再生繊維であるアセテートと絹の混紡)への引き合いも多いという。

欧州市場の開拓は、「ジェトロミラノ展2009」に出展し、ジェトロの「輸出有望案件発掘支援事業」に採択されたことから始まり、同展でバイヤーから高評価を得てイタリアの営業代理と契約した。現在も、テキスタイル見本市「ミラノウニカ」に継続出展しており、受注したテキスタイルは国際宅急便で各ブランドへ輸出している。

日EU・EPAの特恵関税(22%の関税が発効時に即時撤廃)は、2019年5月に欧州の納品先からの要請を契機に、ジェトロのセミナーや「日EU・EPA解説書PDFファイル(0.0B)」を参考に、輸出者が原産性の申告文を作成することで活用している。同社の生地は、日EU・EPAで規定される「2工程ルール」(注)により原産地規則を満たすため、作成に当たり複雑な作業は不要だった。高級アパレルブランド以外の、輸入に不慣れな欧州の納入先もあるが、齋栄織物は同社主導で、欧州輸出分全てについて、原産性の申告をインボイス上に記載しているという。

同社は昨今、日本でストールなどの同社製品の販売も開始した。今後、テキスタイル以外の同社製品を輸出する場合にも、日EU・EPAを活用していきたいという。

写真 齋藤栄太常務取締役と、凹凸感のある3Dシルク(左)、アセテートシルク(右)(ジェトロ撮影)

齋藤栄太常務取締役と、凹凸感のある3Dシルク(左)、アセテートシルク(右)(ジェトロ撮影)

(注)繊維・繊維製品の「2工程ルール」:原料を「紡ぐ」、糸を「織る/編む」、生地を「裁断・縫製」する工程(糸や生地の染色も含む)のうち、2つ以上の工程を、日本またはEU域内で行う必要がある。実際に満たすべき工程は、この考え方に基づき、品目別原産地規則(PSR)で具体的に指定されている。詳細は「日EU・EPA解説書PDFファイル(0.0B)」4-1-6を参照。

(宮口祐貴、上田暁子)

(EU、日本)

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