新型コロナウイルス、メキシコ進出日系企業のサプライチェーンに影響

(メキシコ)

メキシコ発

2020年03月02日

新型コロナウイルス感染の広がりは、メキシコの日系企業のビジネスにも少なからぬ影響を及ぼしつつある。中南米7カ国(メキシコ、ブラジル、アルゼンチン、チリ、コロンビア、ペルー、ベネズエラ)に進出している日本企業の経営実態やビジネス環境の課題、各国の自由貿易協定(FTA)活用状況などを取りまとめた「2019年度中南米進出日系企業実態調査」(調査期間2019年10月~11月)によると、メキシコ進出製造業の回答企業(147社)の半数以上(76社)が、何らかの原材料・部品を中国から輸入していると回答しており、そのうちの約45%の企業は同国からの調達率が25%以上だった(表参照)。米国市場向けの製造拠点であるメキシコにおいて、新型コロナウイルスの拡大による中国産部品・原材料の供給の滞りは、在メキシコ進出日系企業の生産・販売活動に影響を及ぼしつつある。

表 在メキシコ進出日系企業の中国からの部品・原材料の調達状況

3月中に製造・販売を中断する可能性がある企業も

ジェトロは2月中旬に、複数の在メキシコ進出日系企業に対してヒアリングを行った。製造に使用する部品・原材料全体において、中国製が9割を超えているA社は「自社の中国工場で従業員やモノの移動制限が実施されているために操業が実質停止となっており、メキシコ工場への部品供給が間に合わず、3月中の操業が難しい」と回答した。また別のB社は「原材料不足のため、自社の中国工場でメキシコ工場向けの基礎部材を十分に製造できていないことから、原料調達先を中国国内から韓国へ切り替えた。さらに、日本国内工場やメキシコ工場で製造した基礎部材を、逆に中国に輸出する措置を取っている」などして、サプライチェーンをつないでいる状況とのことだ。

日本との間の出張を禁止する企業も

メキシコ日本商工会議所が2月25、26日に実施した「新型コロナウイルス感染症に関する調査」(回答数147社・団体)によると、19%が「日本からメキシコへの渡航を禁止」しており、また23%が「メキシコから日本への渡航を禁止」していると回答した。ヒトの移動制限がある中での対策として、「特殊な事情を除き、会議などは極力ビデオ会議などのオンライン上で行う」といったコメントがあった。

(志賀大祐)

(メキシコ)

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