2019年1~11月の海外直接投資の純流入が30%減、税制優遇制度の行く末を懸念

(フィリピン)

マニラ発

2020年03月02日

フィリピン中央銀行(BSP)は2月10日、2019年11月の海外直接投資(FDI)の純流入額が前年同月比14.6%増の6億2,262万ドルとなり、1~11月のFDI純流入額の合計は前年同期比29.9%減の64億1,284万ドルとなったと発表した。

1~11月のFDI純流入額の内訳は、全体の27.4%を占める株式・投資ファンド持ち分が17億5,819万ドルで前年同月比40.1%減、72.6%を占める負債性資本が46億5,465万ドルで25.2%減といずれも大きく減少した。株式・投資ファンド持ち分の内訳は、株式資本純流入額が8億4,508万ドル(60.4%減)、収益の再投資が9億1,311万ドル(14.4%増)となった。

10月に入り米中貿易交渉の第1段階の合意に向けて両国の話し合いに進捗がみられ、10月中に予定していた中国に対する米国の追加関税措置の延期が表明されたこともあり、投資家心理に改善の兆しがみられ、11月のFDI純流入額が前年同月比14.6%増となった。一方で、日系企業を含む多くの外資系企業が入居するフィリピン経済特区庁(PEZA)などの経済特区の税制優遇制度(注)の抜本的見直しを規定するCITIRA法案(2019年10月2日付地域・分析レポート参照)の国会審議に進展がみられず、長引く世界経済の停滞も重なり、2019年通年のFDI純流入額は前年を大きく下回る見込みだ。

(注)PEZAに入居する製造業の場合、(1)法人所得税の3~6年間の免除(ITH)、(2)ITH終了後は売上総利益の5%を法人所得税とする特別所得税率の適用、(3)関税、埠頭(ふとう)税、輸出税の免除、(4)税関手続きの簡略化などが適用されている。

(坂田和仁)

(フィリピン)

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