アップルウォッチの出荷台数、スイス産の腕時計出荷数を抜く

(スイス)

ジュネーブ発

2020年03月06日

ストラテジー・アナリティックの発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(2月5日)によると、米国のアップルウォッチ(Apple Watch)の2019年出荷台数が3,070万台となり、スイス全体の腕時計出荷台数2,110万台を初めて上回った。アップルウォッチなどのスマートウォッチは、ウェアラブル端末の一部として統計上カウントされており、スイス時計協会などの統計にウェアラブルが含まれていないため、従来型の腕時計とスマートウォッチで輸出金額・台数の直接比較が行われることは、これまでなかった。

米国の調査会社IDCの2019年12月16日の発表によれば、ウェアラブル端末の2019年世界販売台数は3億520万台、うちスマートウォッチは6,930万台に達する見込みだった。前述のストラテジー・アナリティクスの発表によれば、2019年のアップルの販売台数は推定3,070万台に上り、スマートウォッチ販売台数に関しては、アップルが圧倒的首位で、これにフィット・ビット、サムスン、ガーミンが続いているとみられる。アップルウォッチは2015年の販売開始以来、販売台数を伸ばし続けており,2018年時点で既に2,250万台を販売、2019年にはスイス全体の販売台数の約1.5倍の台数を販売したことになる(表1参照)。

表1 出荷台数の推移

一方、スイスの時計産業は、クオーツ時計から機械式の高機能時計にシフトしており、スイス時計協会の発表によれば、2018年の平均輸出単価は859ドルと、価格で他国製品を圧倒しており、中国製の時計の平均輸出単価3ドルと比較すると、その差は300倍近くに及ぶ。金額の統計が入手可能なスイスの腕時計輸出でみると、2018年から2019年にかけては輸出台数を13.1%減らす一方で、販売金額は逆に2.6%増えている(表2参照)。この価格差に支えられた販売額の観点でも、販売価格を399ドル~799ドルに設定しているアップルウォッチの場合、単純平均で販売価格を599ドルとすると、販売総額は、スイス産腕時計全体の輸出総額に匹敵する規模になったとみられる。

表2 スイス産腕時計輸出台数・金額の推移

ハイエンドのスマートウォッチは、SNSの更新通知や心拍計機能といった実用性を備えるウェアラブル端末であることと、装飾品・ブランド品としての高級腕時計であることを兼ねている。スイス時計業界は、ハイエンドのスマートウォッチに対抗するための新たな戦略の構築を迫られている。

(和田恭)

(スイス)

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