次期首相指名のアラウィ元通信相が組閣断念、政治の混迷継続

(イラク)

ドバイ発

2020年03月04日

イラクで次期首相の指名を受け組閣作業を行っていたムハンマド・アラウィ元通信相が3月1日、組閣を断念したとの声明を発表した。憲法が定める組閣の期限が3月2日と迫る中、2月27日と29日に議会での閣僚名簿の信任投票が延期となったことを受けたもの。信任には議会の多数による採決が必要となるが、いずれも議員の欠席が相次いだことが要因となった。

アラウィ元通信相は組閣作業に当たり、イラクで続いている反政府デモの要求を反映し、宗派・民族ごとにポストを配分する慣習を廃した内閣を構築する声明を出していた(2020年2月17日記事参照)。これに対し、国内の少数勢力のスンニ派やクルド人勢力を母体とした派閥を中心に強い反発を招いていた。アラウィ氏は首相指名の辞退に当たり、バルハム・サーレハ大統領に宛てた書簡で「改革と国民への約束事の履行に対し、一部の政治勢力が真剣でなかった」と指摘し、既存勢力の介入や非協力を批判した。

サーレハ大統領はあらためて15日以内を期限として新しい首相候補を指名する。アラウィ氏の候補指名が議会の主要2派閥を率いるムクタダ・サドル師とハディ・アミリ司令官による合意を受けたものだったにもかかわらず、組閣に失敗したことで、デモ隊の要求に応えつつ各ステークホルダーとの調整を行うことの難しさが浮き彫りとなり、イラク政治の混迷が深まっている。

(田辺直紀、オマール・アル=シャマリ)

(イラク)

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