新型コロナウイルス感染者はゼロ、中長期的に経済に影響か

(南アフリカ共和国)

ヨハネスブルク発

2020年02月14日

南アフリカ共和国では2月10日時点で、新型コロナウイルス感染例は発表されていない。南ア国立感染症研究所(NICD)は2月7日、感染の疑いがあるとして検査していた42人全員が陰性であることを確認したと発表した。

1月30日に世界保健機関(WHO)が緊急事態宣言(2020年1月31日記事参照)を出した後、2月1日にズウェリ・ムキゼ保健相が声明を発表した。政府は引き続き新型コロナウイルス感染拡大の経過を監視し、感染防止に向けた厳戒態勢を敷くとした。アジアからの国際線の乗り入れがあるヨハネスブルクとケープタウンの国際空港を含む国内12の入境地点では既に、入国者の体温を計測する水際対策を実施している。また、感染者が発生した事態に対応すべく、国内11カ所の病院で隔離・処置の対応準備を進めていると報道されている。

現時点で国内に大きな混乱は見られないが、報道では、中国国内には南ア人の留学生や英語教師らが約3,000人生活しており、そのうち武漢に住む200人以上が移動制限の対象となっている(「IOL」2月2日)。南ア政府は在中南ア人の緊急避難は「必要ない」との見解を示しており、現地大使館・総領事館を通じてSNSなどを利用し、現地の南ア人に24時間態勢で情報を配信している。なお、ジェトロが南ア外務省にヒアリングしたところ、政府は中国人への査証発給条件を変更していないが、在北京南ア大使館、在上海南ア総領事館ともに領事業務を停止しているため、中国人への新規査証発給は行われておらず、中国人の南アへの渡航は実質的に制限されている状況だ(2月10日)。

今回の新型コロナウイルス感染拡大による南ア経済への影響を現時点で予測することは難しい。しかし、中国は南アにとって輸入の18.4%(2018年)、輸出の9.1%(同)を占める最大の貿易相手国であることから、中国の経済活動の停滞やそれに伴う需要の減少は中長期的に南ア経済に影響をもたらす恐れがある。南ア経済団体連合会(BUSA)のマルティン・キングストン副会長はジェトロのインタビューに対し、南アは中国に対する貿易や投資、観光業の依存度が高いため、中国での感染拡大は南アの経済成長に今後マイナスの影響をもたらす恐れがあると話した(2月10日)。

(高橋史)

(南アフリカ共和国)

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