ジェトロの日系企業実態調査、米国ではコスト増、中国では国内売り上げ減少に苦慮

(米国、カナダ、メキシコ、中国、ASEAN、欧州、日本、世界)

海外調査企画課

2020年02月06日

ジェトロが北米や中南米、アジア・オセアニア、欧州の各地域に進出している日系企業を対象に実施したアンケート調査(調査期間2019年8~12月)で、「米中貿易摩擦をはじめとする通商環境の変化の影響」について横断的に比較調査した。

通商環境の変化による影響について米国、中国では「マイナスの影響」とする回答がそれぞれ40.8%、35.4%でともに最多だった(添付資料参照)。影響の内容をみると、米国では「調達・輸入コスト」を指摘する声が8割以上と圧倒的に多かったのに比べて、中国では「国内売り上げ」の回答割合が7割弱で最も高く、対照的な結果となった。ビジネスコスト上昇が経営上の重要課題となっている米国では、追加関税が追い打ちをかける要因として問題視された。一方、中国では、経済成長が減速する中、追加関税などが輸出入に与える直接的影響よりも、通商環境の変化が国内事業環境のさらなる悪化を招くことへの懸念が強かった。

業績への影響は限定的

通商環境の変化の影響と企業業績の関係をみると、現時点では業績への影響は限定的だ。米国でマイナスの影響を受ける企業のうち、営業利益見込みが赤字の割合は19.1%で、在米日系企業全体(19.2%)と相違はない。中国でもほぼ同様で、マイナスの影響を受ける企業の赤字比率は14.6%で、在中日系企業全体(13.2%)よりわずかに高い程度だった。

しかし、通商環境の変化は企業の業績トレンドには影を落とした。米国ではマイナスの影響を受ける企業のうち、業績悪化を見込む企業が40.4%で、全体(35.8%)より5ポイント弱高い。中国ではより顕著で、業績悪化を見込む企業が49.3%と全体(33.5%)に比べて15ポイント以上高かった。

(秋山士郎)

(米国、カナダ、メキシコ、中国、ASEAN、欧州、日本、世界)

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