2019年の貿易総額、米中貿易摩擦の影響から輸出入ともに前年割れ

(マレーシア)

クアラルンプール発

2020年02月28日

マレーシア統計局は2月4日、2019年の貿易総額が前年比2.5%減の1兆8,354億リンギ(約47兆7,204億円、1リンギ=約26円)と発表した(表1参照)。輸出は1.7%減の9,864億リンギ、輸入は3.5%減の8,490億リンギと、ともに前年割れとなった。米中貿易摩擦や世界経済の減退により、マレーシアや主要貿易相手国の需要が減少したことが最大の原因とみられる。特に、中国やシンガポールとの貿易の鈍化が著しい。他方、貿易収支は11.0%増の1,374億リンギで、1998年以降22年連続の黒字となり、2009年以来最高の黒字を達成した。

表1 貿易動向

輸出を品目別にみると、主要品目が軒並み前年比減となった(表2参照)。全体の37.8%を占める電気・電子製品は、2.3%減の3,727億リンギだった。電気・電子製品の46%を占める集積回路が0.7%減の1,715億リンギと落ち込んだ。パーム油・同製品、精製石油製品、液化天然ガス(LNG)なども振るわなかった。

表2 主要貿易品目(上位5品目)

輸出を国・地域別でみると、中国向けが前年比0.3%増の1,396億リンギと、全体の14.2%を占めて最大だった(表3、図参照)。前年比で微増にとどまり、米中貿易摩擦の影響を受けて伸び率の減速基調が顕著となった。例年、最大の輸出市場はシンガポールだったが、同国向け輸出は縮小した。日本向けはLNG、木材製品や電気・電子製品などの減少が響き、7.3%減の652億リンギとなった。

表3 主要貿易相手国(上位5カ国)
図 輸出の増減率(前年同期比)と国・地域別寄与度の推移

輸入も減少傾向で、全体の約3割を占める電気・電子製品は前年比6.5%減の2,455億リンギだった。主要品目はほぼ軒並み前年割れになったが、原油は16.4%増加した。原油輸入元の約35%を占めるサウジアラビアからが大きく増えており、2019年初から試運転が始まったジョホール周辺の石油精製・石油化学コンプレックス事業(通称:RAPID)の原料調達が拡大している影響とみられる。

輸入を国・地域別にみると、全体シェアの2割を占める中国からは0.1%増の1,756億リンギと9年連続で首位だったが、減速基調は鮮明になった。対中輸入を品目別にみると、石油製品、輸送機器やプラスチック製品などが増えた。日本からの輸入は、0.4%減の636億リンギとほぼ横ばいだった。

新型コロナウイルスによる経済的影響を懸念

2020年の貿易の見通しについて、国際貿易産業省(MITI)は世界需要の回復、原油やパーム油の価格上昇を見込んでおり、貿易総額が2兆リンギ、輸出入額とも2%程度の増加と予想している。しかし、新型コロナウイルスがマレーシア経済や貿易に及ぼす悪影響を懸念する声もある。MITIのオン・キアン・ミン副大臣は、現時点で影響は不透明としつつも、状況を注視する姿勢を示している。

(エスター頼敏寧)

(マレーシア)

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