保健省、初の新型コロナウイルス感染確認で緊急事態を宣言、監視対象は日本含む16カ国
(ブラジル)
サンパウロ発
2020年02月27日
ブラジル保健省は2月26日、国内で初めて新型コロナウイルス感染を確認したと発表した。これに伴い同省は、緊急オペレーションセンター(COE)評価でレベル3となる公衆衛生上の緊急事態を宣言した。また、感染拡大防止を呼び掛ける情報提供を同省ウェブサイトで行っている。
感染が確認されたのは、サンパウロ市南部地区在住のブラジル人男性(61歳)1人。同氏は、仕事で2月9~21日に1人でイタリア北部ロンバルディア地方を訪問。帰国後に、熱、せき、喉の痛みなどの症状を訴え、サンパウロ市内のアルベルト・アインシュタイン病院を訪れた。同病院では25日に感染疑いを保健省に通報後、世界保健機関(WHO)推奨のウイルス(SARS-CoV-2)検体検査を行い、陽性となった。検体は同日、連邦政府が参照機関として指定しているアドルフォ・ルッツ研究所に送付され、3時間後に陽性が再確認された。
当該男性は帰国後、親戚一同が会するパーティに参加していたことから、パーティに参加した30人全てが、医師の指示に従い、自宅で隔離されている。
国家衛生監督庁(ANVISA)は2月25日、当該男性が搭乗したミラノ発フライトの全乗員乗客リストの提出を航空会社に要請。保健省は26日、当該男性が座った列と前後2列の計16人を特定し、検疫対象にしたと発表した。
保健省は2月26日、今回の新型コロナウイルス感染確認以外に、計20人(サンパウロ州11人、リオデジャネイロ州2人、サンタカタリーナ州2人など)の感染疑いを発表。うち12人はイタリアからの帰国者だ。これまでに感染が疑われていた59人は、検査の結果、新型コロナウイルスでなかったことが判明している。
保健省は2月24日までに、計16カ国(中国、韓国、北朝鮮、日本、シンガポール、タイ、ベトナム、カンボジア、ドイツ、オーストラリア、アラブ首長国連邦、フィリピン、フランス、イラン、イタリア、マレーシア)を新型コロナウイルス監視対象国に指定した。対象国からの入国者は、入国後14日間に、発熱、せきなどの症状が表れた場合は直ちに検疫を受けるよう、関係当局に周知徹底している。
2月26日現在、これら対象国のうち、渡航自粛対象国は中国のみで、保健省は他国については検疫上の制限措置を設けていない。ルイス・エンリケ・マンデッタ保健相は「欧州からの直行便の制限や国を閉ざすことはできない」とコメントしている。
マンデッタ保健相は2月26日、「新型コロナウイルスの感染国が拡大しており、今後、ブラジルでの感染が増える可能性がある」とし、「引き続き感染防止に全力を挙げるとともに国内での患者が重症化しないための対策を講じる段階に入った」と言及した。具体的には、「南半球のブラジルは現在真夏のため、ウイルス特性を観察しつつ、機材や医薬品を整備し、官民医療機関による検知量や症状緩和の向上に努める」と説明している。
ワンダーソン・オリベイラ保健省監視局長は2月24日、2019年に国内でまん延したインフルエンザを例示して、「北半球の中国での同感染は11月中旬に拡大期に入り、4月下旬に終息した。一方、ブラジルは4月中旬に拡大期に入り、9月中旬に終息した」と説明している。
ウイルスの拡大期に備え、ブラジル国内において新型コロナウイルスの拡散封じ込めや感染者の症状を緩和する有効な手段が確立できるかは、これからが正念場だ。
(大久保敦)
(ブラジル)
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