欧州商工会議所、循環型経済に向けた実践取り組み事例を公表

(EU)

ブリュッセル発

2020年02月21日

欧州商工会議所(ユーロチェンバース)は2月20日、EUが優先課題としての取り組みを進める「欧州グリーン・ディール」(2019年12月13日記事参照)の主要課題と位置付けられる循環型経済への対応について、中小企業向けに欧州各国・地域の商工会議所による実践プロジェクトおよびイニシアチブの事例を紹介する報告書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を明らかにした。循環型経済への移行に伴い、生産工程などサプライチェーン全体の革新を求められる中小企業の対応を組織的に支援する狙いがある。

社内研修から国際展開まで幅広い「循環型経済」対応事例を紹介

ユーロチェンバースは、EUの目指す循環型経済の在り方について「企業収益性の確保」を前提として求めており、このためには各国・地域の商工会議所の持つ専門性や知見を欧州レベルのネットワークを通じて共有するべきで、それが欧州商工会議所の役割との認識を示す。具体的には「新たなビジネスモデルの取り入れ」「資金調達支援」「多国間で連携するための個別指導および機会の提供」などを通じて、循環型経済の利益を中小企業が享受できるよう確保する考えだ。

今回の報告書が取り上げた各国・地域の取り組みは32事例あり、13カ国が関わるが、複数の国や地域の連携案件も含まれる。EU加盟国に限らず、セルビアなどEU加盟候補国の事例なども取り上げられている。また、商工会議所が進める具体的な取り組みとしては(循環型経済に関わる)「認証」「指導(研修・コンサルティング)」「協力・連携」「リユース・リサイクル」「廃棄抑制」の5テーマに整理されるという。

フィンランド商工会議所は、EUが掲げる気候中立(温室効果ガス=ゼロ)目標よりも早い、2035年または2040年までに気候中立を担保するため、「企業のための排出削減トレーニング」と呼ばれるイニシアチブを2019年11月に立ち上げ、企業向けに温室効果ガスに関わる排出量算定やデータ報告などのトレーニング・コースやワークショップを開催する。フィンランド商工会議所は、企業実践成功のカギは「顧客と従業員を巻き込んだ取り組み」にあるとみており、同会議所内に「持続可能性委員会」を設置し、各企業の温室効果ガス削減計画を審査する。

ドイツの事例では、ドイツ連邦・環境・自然保護・建設・原子力安全省が進めている「環境技術輸出イニシアチブ」を活用し、環境に優しいドイツの革新的技術やノウハウを国外に輸出、当該国に環境基準の構築を図る企業を、在外ドイツ商工会議所が支援しているという。循環型経済は、持続可能なモビリティー、水質管理とともに同イニシアチブの重要テーマで、既にポルトガルやルーマニア、クロアチア、ロシア、ウクライナ、インドネシア、チリに所在するドイツ商工会議所において、循環型経済に関わる支援実績がある。ロシアでは自治体の廃棄物管理システムの改善を支援、ウクライナでは廃棄物管理に関わる国家戦略策定に法的支援を行った、という。

(前田篤穂)

(EU)

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