新型コロナウイルス、米国南西部のビジネスへの影響じわり

(米国)

ロサンゼルス発

2020年02月10日

新型コロナウイルスによる影響が、米国南西部地域でも徐々に表れ始めている。これまでのところ、物流や企業活動に顕著な支障は出ていないが、長期化に伴う影響を懸念する声が上がっている。

ロサンゼルス地域の港湾では、中国からの輸入コンテナ貨物が全体の半数を占めるが、「デイリー・ブリーズ」紙(電子版2月4日)は、ロサンゼルス港湾局およびロングビーチ港湾局の各担当者のコメントとして、状況を注視しているが、これまでのところ港湾運営への支障は生じていない旨を報じた。元々、春節時期は中国からの出荷量が減り、例年2月前後はロサンゼルス地域の港湾の取扱貨物量も減る。ただし、2020年は春節休暇後の中国企業の操業開始時期が延長される動きもある(2020年1月30日記事参照)。ロングビーチ港湾局の担当者は、中国工場の操業停止が長引く場合、貨物の取扱量が毎週約1%ずつ減る可能性があるとの懸念を示した。

健康食品などに関する情報発信メディア「ニュー・ホープ・ネットワーク」は2月1日、サプリメント大手ナウ・フーズ(Now Foods)のジム・エミー最高経営責任者(CEO)のコメントとして、中国・武漢は同社のアミノ酸やビタミンCの原材料供給地で、これまでのところ供給に問題はないが、長期化すると影響は必至の旨を伝えた。

米国南西部では1月26日時点で、カリフォルニア州ロサンゼルス郡およびオレンジ郡、アリゾナ州マリコパ郡で各1人の新型コロナウイルスの感染者が確認されていた。そのうちオレンジ郡の患者については、状態が良好のため2月1日に病院から退院したが、隔離はされている。武漢から米国政府によるチャーター機でカリフォルニアに到着した約350人は、2月5日に州内に国防総省が新型コロナウイルス対策のため設置した避難所施設のトラビス空軍基地とミラマー海兵隊航空基地に移送された。

米国務省の発表した中国への渡航禁止勧告や、米大手航空会社が中国と結ぶ航空路線の運休を決めたことを受け(2020年2月5日記事参照)、在米日系企業の中でも、中国などへの出張が中止になる例が出始めている。

また、米国で開催される一部の展示会やイベントへの影響が見られ始めている。ハワイ州観光局は1月28日、3月5日に予定していた「中国サミット」の延期を決めた。また、中国健康産品協会(HPA-China)は2月3日、ロサンゼルス近郊のアナハイムで3月3日から開催予定の「ナチュラル・プロダクト・エキスポ・ウェスト(NPEW)2020」内で、同協会が実施するパネルイベントに、中国からのスピーカーが米国の入国制限のために登壇できない可能性があると発表した。

(北條隆)

(米国)

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