新型コロナウイルスで2020年の経済成長率予測をマイナス0.5~1.5%へ下方修正

(シンガポール)

シンガポール発

2020年02月21日

シンガポール貿易産業省(MTI)は2月17日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、2020年通年のシンガポールのGDP成長率予測を前年比マイナス0.5%~1.5%とし、これまでの予測の0.5~2.5%から下方修正すると発表した。同省は2020年の成長が「予測の中央値である約0.5%と予想される」と述べた。同国での新型コロナウイルスの感染者は同月16日までに75人(回復済みの19人を含む)に上っている。

MTIは発表で「新型コロナウイルスが複数のチャネルを通じてシンガポール経済に影響を及ぼす」と述べた。まず、製造業や卸売り取引などの分野が中国など主要な最終需要市場の低迷による影響を受けると指摘。また、特に中国人など外国人観光客の急減が観光や輸送部門に打撃を与えている。MTIはさらに、地元客が買い物や外食を控えることで国内消費も低迷する見通しだとしている。

首相がリセッションの可能性に言及

リー・シェンロン首相は2月14日、新型コロナウイルスが国内経済に与える影響について、「リセッション(景気後退)となるかは言えない。ただ(リセッションの)可能性はあり、国内経済が打撃を受けるのは間違いない」との考えを示した(「ビジネス・タイムズ」紙2月15日)。リー首相は、新型肺炎(SARS)が流行した2003年と比べて東南アジアと中国との経済関係が深化していることから、近隣経済へのインパクトが「少なくとも向こう2四半期は多大なものになる」と述べた。

一方、MTIの発表によると、2019年通年の実質GDP成長率は前年比0.7%(改定値)と、1月2日に発表した速報値と変わらなかった(2020年1月8日記事参照)。分野別では、製造業がエレクトロニクスや化学、精密エンジニアリング、輸送エンジニアリングの低迷により前年比マイナス1.4%となった。一方、建設は2.8%、サービスも1.1%だった(表参照)。

表 シンガポールの実質GDP成長率の推移

(本田智津絵)

(シンガポール)

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