労働法令などの改正法案の国会審議を開始

(インドネシア)

ジャカルタ発

2020年02月26日

インドネシア政府は2月12日、労働法令の改正案を含む「雇用創出オムニバス法案」を国会に提出した。同法案は、企業の投資拡大による雇用創出を企図しており、投資許認可手続きの改正、労働法の改正などが含まれることから、投資環境改善の目玉となるかが、注目される。

ジェトロが入手した雇用創出オムニバス法案の原文、および関連する政府発表資料によると、同法案は全11分野、79の既存法令について改正する内容になっている。その中でも労働法の改正については、最低賃金や退職金、解雇、失業保険、就業時間、アウトソーシング、外国人労働者などを主な項目とし、以下のような点の改正を規定している。

最低賃金の上昇率については、現行の「国の経済成長率とインフレ率の和」を改め、オムニバス法案では「州別経済成長率」に基づくとした。近年、8%超の最低賃金上昇率が続いてきたが、同法案が可決されれば、ジャカルタや西ジャワ州の最低賃金上昇率は5%台まで下がることが期待される。

解雇については、同法案では、雇用者側の解雇可能事由が追加された。例えば、従業員が5日連続で無断欠勤した場合や、雇用契約や会社規則に違反した場合、会社に返済義務のある債務を滞納している場合、などを解雇事由とした。ただし、解雇手続きは従来どおり、原則として産業関係紛争解決機関の採決を経る必要がある。

退職金については、現行法令(労働法2003年第13号)において、退職手当や功労金、損失保証金、送別金を定めているが、同法案では、このうち損失保証金を法令の対象外として雇用契約で定めるとした。さらに、重大な違反などにより解雇された従業員に対する送別金については、条文を撤廃した。

他方、オムニバス法案では、新たに失業保険の導入を規定した。これにより、解雇された従業員は、手当金や職業訓練、就職案内などの社会保障を受けられる見込みだ。

地元報道によると、同法案は5月中の成立を目標としている。

(山城武伸)

(インドネシア)

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