ジェトロの日系企業実態調査、保護主義の影響は多面的・多重的・多層的に波及

(米国、カナダ、メキシコ、中国、ASEAN、欧州、日本、世界)

海外調査企画課

2020年02月07日

米中貿易摩擦をはじめとする通商環境の変化に伴い、追加関税措置など保護主義的な貿易制限的措置が対象とする品目範囲は大きく広がり、各国・地域の企業活動に影響を与えている。ジェトロが、北米、中南米、アジア・オセアニア、欧州の各地域に進出している日系企業を対象に実施したアンケート調査(調査期間2019年8~12月)によると、措置の増加による影響は、国・地域別に状況は異なるものの、多面的(輸出入、国内取引など)・多重的(同一品目への複数の課税)・多層的(サプライチェーンの各層)に波及している。

米中とも米通商法301条による追加関税の影響が最大

米国では、調達コストに影響を及ぼす「米通商法301条による追加関税(第1~4弾)」を挙げる企業が約半数で最も多く、「鉄鋼・アルミニウムを対象とした追加関税」と「米通商法301条による追加関税に対する中国の報復関税」が続いた(表参照)。米国では、中国向けに輸出を行う企業が74社(12.8%)にとどまるのに比べて、中国から調達をしている企業は169社(31.0%)に上ることから、輸入関税の影響が輸出相手先の関税の影響を上回った。また、複数の追加関税によって影響の大きい企業も存在した。

一方、中国でも、「米通商法301条による追加関税(第1~3弾)」が最多で、次いで「米通商法301条による追加関税(第4弾)」と「米通商法301条による追加関税に対する中国の報復関税」が多かった(注)。中国では、米国から調達している企業(製造業)が29社(8.3%)にとどまるのに対して、対米輸出を行う企業が97社(輸出企業の23.2%)に及ぶことが結果に反映された。

このほか、ASEANでは、「米通商法301条による追加関税に対する中国の報復関税(第1~3弾)」(26.5%)による影響が、「通商法301条による追加関税」(25.5%)をわずかに上回った。製造業、非製造業とも、国内顧客向け販売の減少を通じた間接的な影響を受ける企業も確認された。欧州では、「米国の鉄鋼・アルミニウムを対象とした追加関税への報復関税」の影響を受けている企業が最多だった。特に、EUによる鉄鋼・アルミニウムを対象とした全世界向けセーフガード措置への懸念が強く、米国の追加関税の影響を上回った。

表 主要国・地域で最も影響を受けている政策

(注)米国通商法301条による追加関税の影響は第1~3弾と第4弾に分けているが、米国とカナダは第1~4弾としてまとめて質問した。

(秋山士郎)

(米国、カナダ、メキシコ、中国、ASEAN、欧州、日本、世界)

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