新型コロナウイルスのマレーシア国内感染者8人、湖北省に限りビザ発給一時停止

(マレーシア)

クアラルンプール発

2020年02月04日

マレーシア保健省は1月25日、マレーシア国内での初めての新型コロナウイルスの感染者が3人確認されたと発表した。2月2日時点で、マレーシア国内の感染者は8人となっている。首相府は1月27日、武漢市および湖北省に居住する中国国籍者へのビザ発給を一時停止することを決定した。また、1月28日には武漢市からの旅行者14人を中国へ帰国させている。

全てのビザが発給停止の対象に

ビザの発給停止措置は、オンラインおよび窓口申請にかかわらず、全てのビザが対象になるという。首相府は、世界保健機関(WHO)による感染拡大防止に向けた勧告に沿った対応の一環としている。同時に、監視の強化や対策の拡充にも取り組む(2020年1月23日記事参照)。2月2日時点で、中国の渡航歴がない人への国内感染は確認されていない。

観光業界に影響の恐れ

新型コロナウイルス発生により、観光業への影響が懸念されている。マレーシア政府は、2020年を「ビジット・マレーシア・イヤー2020(VMY2020)」と定め、年間訪問者数3,000万人を目標に観光促進に注力している。特に、中国からの訪問客は年間200万人を超え、国別ではシンガポール、インドネシアに次いで3番目に多い。加えて、2020年を「マレーシア・中国文化観光年」と銘打って、中国文化観光部と連携して両国間の文化交流、観光の促進に取り組むなど、中国はVMY2020にとって重点国の1つだ。中国からの訪問客については、2016年から15日以内の社交目的の訪問であれば、ビザが免除され、代わりにeNTRI(電子旅行登録情報)というオンラインシステムに登録することで、渡航が許可される制度が開始された。当初2019年末で終了予定だったが、VMY2020に合わせ2020年末までの延長が決定した。しかし、このeNTRIも一時発行停止の対象となる。また、中国政府も中国のインバウンド、アウトバウンド双方の旅行ツアーを中止するよう旅行会社に勧告しているという。

国内経済への打撃を懸念

マレーシア旅行業者連盟(MATTA)のタン・コック・リャン会長は「新型コロナウイルスの発生により、国内観光産業が甚大な影響を受ける」と懸念を表明する。政府は、観光業に加え、卸売・小売業、運輸業などの観光関連サービス業への影響も念頭に置き、世界的に感染状況がさらに悪化した場合、景気刺激策の発動も検討するという。中国からの訪問客のピークの1つが1~2月ということもあり、今後の感染拡大や国内経済への影響が懸念される。

(田中麻理)

(マレーシア)

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