トランプ米政権、WTO政府調達協定からの離脱を検討か

(米国)

ニューヨーク発

2020年02月28日

米国内でトランプ政権がWTOの政府調達協定(GPA)からの離脱を検討しているとの観測が出ている。これまで政権による公式発表はないものの、トランプ大統領は以前にGPAの影響分析などをするよう指示しており、実際に離脱するとなれば、外国企業による米国の公共調達市場アクセスに支障が出る懸念がある。

観測の発端は、トランプ政権内でGPAを離脱するとの大統領令の草案が回付されているという「ブルームバーグ」(2月4日)の報道だ。米通商専門誌「インサイドUSトレード」(2月26日)によると、政権内のピーター・ナバロ大統領補佐官兼通商製造業政策局長が主導し、米通商代表部(USTR)のロバート・ライトハイザー代表も支持しているという。また、複数国間の協定ではなく、2国間交渉による政府調達内容の改善を求めているとみられると報道している。

GPA離脱の可能性に関して、大統領や閣僚からの明言はないが、米国にとってGPAはメリットが乏しいとの見方がある。GPAには48カ国が加盟し、中国やロシアなど11カ国が加盟申請中だが、米政府説明責任局(GAO)によると外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、米国の政府調達市場に参入する上位6つの国・地域(EU、カナダ、韓国、日本、ノルウェー、メキシコ)の参入実績が50億ドル(2015年)なのに対して、それらの国・地域への米国の参入実績は20億ドルにとどまる。こうした中、トランプ大統領は2017年4月に発出したバイアメリカン法令の運用を強化する大統領令の中で、GPAの影響分析を商務長官とUSTR代表に指示していた(2017年4月27日記事参照)。分析結果やその後の対応などは公表されていない。

他方で、米国商工会議所は、GPAにより米国企業は外国の政府調達に対等な条件で参入することができているが、GPAを離脱した場合はその恩恵を受けらないため、米国企業にとっては害となるとして、反対の姿勢を示している。さらに、GPAは米国の貿易協定の中でも最も互恵的な協定の1つとの認識を示してGPAを支持している。

離脱が現実となれば、米国でGPA加盟国が一部免除されてきた公共事業における米国産品の購入・使用などバイアメリカン関連法令の義務を負うことになる。また、米法律事務所ミラー&シェバリエによると、米国がGPAを離脱した場合、外国企業は米国の公共事業への入札価格に6%または12%(国防総省の入札事業は50%)を上乗せされた状況で米企業との競争を強いられる。

(藪恭兵)

(米国)

ビジネス短信 2c2e1d8ee38c970f