2019年のGDP成長率は4.3%、輸出入と製造業の鈍化が響く

(マレーシア)

クアラルンプール発

2020年02月25日

マレーシア中央銀行と統計局は2月12日、2019年第4四半期(10~12月)の実質GDP成長率を前年同期比3.6%と発表した(表1参照)。同時に発表された2019年通年の実質GDP成長率は4.3%で、四半期ベースと通年の成長率とも2009年の世界金融危機以来の低水準となり、マレーシア政府や世界銀行、IMFの予測値を軒並み下回った。

米中貿易摩擦が影響

第4四半期のGDP成長率を需要項目別にみると、成長の牽引役である個人消費は前年同期比8.1%で、堅調な成長を見せた。安定した賃金上昇と通年で1.4%増となった低いインフレ率のほか、生活必需品、外食やホテルなどの娯楽サービスへの好調な支出が後押しした。民間投資は4.2%で、前期(0.3%)から回復した。運輸サービスや建設関連製造業への投資案件が貢献したという。政府消費はプラス成長を維持したが、前期(1.0%)に続き1%台にとどまった。公共投資は9四半期連続のマイナス成長を記録した。成長率に最も影響を与えたのは輸出の減少だ。米中貿易摩擦に伴う輸出入の減少、世界的な半導体市場の不調を背景に、前期に続いて輸出入ともにマイナス成長だった。

表1 需要項目別実質GDP成長率〔前年(同期)比〕の推移
図 実質GDP成長率と項目別寄与度の推移(前年同期比)

第4四半期GDP成長率を産業別にみると、サービス業が6.1%と成長を牽引した(表2参照)。他方、ここ数年4~5%の成長率でサービス業と並んで成長を押し上げてきた製造業が、輸出入の鈍化を背景に3.0%と4%台を割り込んだ。特に主力の電子部品などが2.8%と伸び悩み、2018年第4四半期(7.6%)と比べると4.8ポイント減と大幅に落ち込んだ。また、パーム油は天候不順などによる生産減を受けて、2桁減の大幅な減少。鉱業も一時的な施設閉鎖や価格下落による液化天然ガスの生産縮小が響いた。

表2 産業別GDP成長率の推移〔前年(同期)比〕の推移

新型コロナウイルスの影響は未知数

ノル・シャムシアー中央銀行総裁は2020年の経済見通しについて、国内経済は引き続き内需が下支えすると述べた。他方、世界中で猛威を振るう新型コロナウイルスによる観光業や製造業の生産網への打撃などが第1四半期(1~3月)のマレーシア経済へ影響することを懸念している。ただし、重症急性呼吸器症候群(SARS)と中東呼吸器症候群(MERS)が流行した2003年、2015年の成長率はそれぞれ5.9%、5.1%だったことに触れ、一時的な国内経済の下落は避けられないものの、新型肺炎終息後の早い回復を期待している。

(田中麻理)

(マレーシア)

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