欧州委員長、多年度財政枠組み合意への決意表明

(EU)

ブリュッセル発

2020年02月17日

欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は2月12日、フランス・ストラスブールでの欧州議会本会議で行ったスピーチ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、EU多年度財政枠組み(MFF:Multiannual Financial Framework)の合意に向けた決意を表明した。

次期MFFは2021~2027年のEUにおける各年次予算の大枠を定義することになる。委員長のスピーチは、2月20日の欧州理事会(EU首脳会議)の特別会合を前に、欧州委員会の政策を実行する上での早急なMFF合意の必要性を喚起する目的で行われた。特別会合は欧州理事会のシャルル・ミシェル常任議長がMFF合意を目的に開催を呼び掛けたものだ。

フォン・デア・ライエン委員長はスピーチで、次期MFFの検討が既に2年間近く続いている状況に対して、「早期に予算の合意が達成されなければ、われわれは2021年に、気候変動対策への支出を行うことも、研究開発への支援も、EUの結束政策(注)の維持もできなくなる」と警鐘を鳴らした。英国のEU離脱に伴い7年間の歳入が約750億ユーロ減少し、合意に向けた交渉は容易ではないとの認識を示しつつも、枠組みの方向性として「旧来の優先課題と新しい優先課題との適切なバランス」の必要性を訴えた。

具体的には以下の8つの課題に言及した。

  • デジタル分野のスタートアップへの投資
  • 人工知能(AI)の潜在力の探求
  • 調査研究における世界の先進的地域としてのEUの地位確保
  • EU域内のあらゆる地域で若年層により良い未来を提供すること
  • 移民問題の根源的な要因への対処
  • 人災や自然災害に際して連帯(solidarity)を行動で示すこと
  • EU共通安全保障と防衛政策の強化
  • 気候変動対策

委員長はとりわけ最後に挙げた気候変動対策に関して、「市民にとっての最優先課題であり、われわれにとっては挑戦ではあるが、この挑戦を機会に変えていくことが義務だ」と述べ、欧州委員会にとっての重要性を強調した。さらに「全体予算の25%以上を気候変動対策に割くことが確保されない限り、いかなる合意も受け入れるつもりはない」と決意を語った。

(注)結束政策(Cohesion Policy):欧州全体としてより調和のとれた持続可能な発展を遂げることを目的とした包括的政策で、主に欧州地域開発基金、欧州社会基金、結束基金などを通じて拠出される。

(安田啓)

(EU)

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