香港の観光・飲食業界への新型肺炎の影響は「SARSやデモ以上」

(香港)

香港発

2020年02月27日

新型コロナウイルスによる肺炎(以下、新型肺炎)が、香港特別行政区(以下、香港)の観光や飲食業界に深刻な影響を与えている。

香港政府観光局(HKTB)が2月14日に発表したプレスリリースや地元メディアの複数の報道によると、香港への1日当たりの来訪客数は1月の春節休暇前には約13万人だったが、1月下旬には約6万5,000人に半減し、2月には約3,000人にとどまり前年同月比で98%減と大幅に減少しているという。

新型肺炎対策で、中国本土の各都市をはじめ、日本を含む世界各国と香港を結ぶフライトの減便・運休や、香港~中国本土間の入境ポイントの閉鎖および入境管理の厳格化などの措置が取られたことによる。

2月25日付の香港官営メディア「香港電台網」によると、香港政府観光局の程鼎一総幹事は「現在の状況は、重症急性呼吸器症候群(SARS)の影響を受けて過去最悪の来訪客数を記録した2003年5月(1日約1万人)より深刻」と述べ、危機感を強めた。また、2月18日付の同メディアなどによると、2月の香港のホテルの客室稼働率は約2割に落ち込み、一部高級ホテルに至っては客室稼働率が1桁に落ち込んでいるという。

観光業界に加え、飲食業界も深刻なダメージを受けている。来訪客数の大幅な減少だけでなく、公務員などは在宅勤務を命じられており、自宅で食事を取る香港市民が増えているためだ。ジェトロが在香港の日系企業に対してヒアリングを行ったところ、同社顧客の日系チェーンレストランの直近の売り上げは、2019年のデモ・抗議活動時と比べてさらに半分程度に落ち込んでいるという。デモの際の売り上げは通常の半分だったので、現在は通常の売り上げの約4分の1にまで減少していることになる。

香港政府は2月26日、香港永住権保有者を対象とした1人当たり1万香港ドル(約14万円、1香港ドル=約14円)の補助金の支給や、300億香港ドル規模の「防疫・感染対策基金」の創設を盛り込んだ2020/2021年度(2020年4月~2021年3月)の予算案を発表した。香港政府は、補助金の支給で市民の消費を刺激するとともに、上述の基金の財源の一部を観光業界の支援に充てるとしている。

(吉田和仁)

(香港)

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