ムーディーズ、ベトナムの格付けを据え置くも、見通しはネガティブ

(ベトナム)

ハノイ発

2020年01月24日

米国の格付け会社ムーディーズは12月18日、ベトナム政府の国債格付けを「Ba3」に据え置く一方、格付けの見通しをネガティブに引き下げた。

ムーディーズは2018年8月にベトナムの格付けを「Ba3」に引き上げたが(2018年9月3日記事参照)、ベトナム政府の債務返済に遅延が見られると指摘し、2019年10月から格付けの下方修正を検討していた。

ムーディーズは「Ba3」に据え置いた背景として、ベトナムの成長性や経済の多様性への評価を挙げた。米中貿易摩擦の影響が長引く中、貿易や投資のベトナムへの移管によって競争力の向上や高付加価値産業への移行が推進され、世界貿易の減速といった悪影響が部分的に緩和されているとの見方を示した。また、安定した経済成長や国内金利の低下などが見込まれ、ベトナム政府の債務負担は徐々に減少していくと予想している。

さらに、ベトナム政府の債務返済の遅延は、財政の脆弱(ぜいじゃく)さによるものではなく、管理上の問題と指摘した。同時に、政府内の債務管理の調整機能や透明性の改善に向けてより具体的で抜本的な措置が講じられない場合、継続的に政府保証債務の返済遅延リスクが生じるとして、格付けの見通しをネガティブに変更した。

ネガティブにしたことを受け、ムーディーズはベトナムの銀行18行の格付けも見直し、12月19日に10行の見通しをネガティブに引き下げた。

ベトナム財務省は今回の見直しに対して、政府は債務返済に向けて迅速に行政手続きなどの改善を行っていると反論した。グエン・スアン・フック首相は各省庁に債務返済の遅延が生じないよう指示を出した。

(庄浩充)

(ベトナム)

ビジネス短信 f9281a5faec6fae5