2019年の自動車販売は3年連続の減少、130万台に落ち込み

(メキシコ)

メキシコ発

2020年01月16日

2019年のメキシコの自動車販売台数(大型バス・トラックを除く)は前年比7.7%減の131万7,727台で、2017年以降3年連続の減少となった(2020年1月16日記事参照)。

企業別にみると、50年以上の歴史を持ち、以前は、「ビッグファイブ」と称されていたゼネラルモーターズ(GM)、フォード、フィアットクライスラー・オートモービルズ(FCA)、日産、フォルクスワーゲン(VW)の5社の販売が軒並み大きく減少した(表参照)。日系企業ではマツダが主力のマツダ3のモデルチェンジにより販売を伸ばした一方、トヨタとホンダの販売は伸びなかった。他方、スズキの販売は4年連続2桁増と好調を維持し、三菱自動車やいすゞ、スバルも販売を伸ばした。韓国勢では起亜がプラスを維持したものの、現代は前年比で減少に転じた。

表 メキシコの企業別自動車販売台数(大型バス・トラックを除く)

ビッグファイブの販売不振の要因は、得意とする大衆向け小型車のセグメントの不振による。サブコンパクト部門(1.5リットル前後の小型車)は前年比8.0%減、コンパクト部門(1.8リットル前後の小型車)は12.4%減と低迷している。大衆車の販売不振の背景には、為替相場の安定とインフレ抑制を目的に、政府がここ数年、政策金利を引き上げてきたことがある。政策金利は2016年2月の3.25%から2018年末には8.25%の水準まで引き上げられ、自動車ローンの金利も上昇傾向にあった。これが、ローン販売への依存度が高い中間層の購入意欲をそいでいる。2019年1~11月の国内販売に占めるローン販売の比率は59.5%で、前年の68.2%から大きく低下した(図参照)。2019年のローン販売台数が、国内販売全体よりも大きく落ち込んだためだ。

図 自動車ローンを利用した国内販売台数の推移

物価安定と政策金利の低下による購買意欲向上に期待

2019年に入り、通貨ペソの対ドル為替レートは安定し、1ドル=19ペソ台の前半から18ペソ台の後半でおおむね推移している。そのため、輸入インフレ率は2018年に3.32%だったものが、2019年(10月末時点)は年率でマイナス1.92%に低下し、全体のインフレ率も2018年の4.83%から2019年は2.83%に低下している。インフレ率の低下と米国側の政策金利の引き下げに伴い、メキシコ中央銀行も政策金利を2019年8月の8.25%から、12月末には7.25%まで引き下げている。中央銀行の報告書(2019年12月5日発表)によると、自動車ローンの平均金利は2016年4月の11.7%から2019年4月の13.7%へと、3年間で2.0ポイント上昇したが、2019年8月以降の政策金利の引き下げに伴い、今後は低下に向かうことが期待されている。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

ビジネス短信 f90ae96d7056aecb