刑法や刑事訴訟法を厳格化、「防犯パッケージ法」成立

(ブラジル)

サンパウロ発

2020年01月09日

ブラジルで「防犯パッケージ法」と呼ばれる新法が法律第13,964号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますとして2019年12月24日付の官報に掲載された。2020年1月23日から施行される。

この法律は既存の刑法や刑事訴訟法を厳格化するもので、暴力や武器使用による深刻な脅威に対する法定刑が引き上げられる。例えば、ナイフを使用した強盗で有罪判決を受けた場合、刑期が最大で50%延びる。爆発物を使用した強盗も法定刑が引き上げられる。

2019年1月1日に就任したジャイール・ボルソナーロ大統領は選挙期間中、治安改善の手段として刑の厳罰化を公約していた。今回の新法は、セルジオ・モーロ法相が2019年2月に議会に提出した草案と、連邦最高裁判所(STF)のアレシャンドレ・デ・モライス裁判官を調整役とする法務委員会が議会に提出した草案を一本化したもので、12月10日に国会で承認された。

なお、ボルソナーロ大統領は、議会から提出された法案の基本線は維持したものの、法案内の25カ所について拒否権を行使した。その主な内容には、「使用が制限もしくは禁止されている銃器使用による殺人の法定刑の引き上げ」「SNSを通じて誹謗(ひぼう)や中傷、名誉棄損をした場合、最大で禁錮9年までの法定刑引き上げ」がある。大統領は拒否権発動の理由にいて、前者は、自衛目的もしくは警察などの第三者が銃を使用して亡くなった場合、有罪を受ける可能性があり、公安機関の活動に法的な不確実性をもたらす恐れがあるためとしている。後者については、草案では、同種の軽犯罪で科される最大2年の禁錮刑を上回るため、警察署での勾留が義務化され、警察署の取り調べが過密状態になる恐れがある、と指摘している。

新法では、議会審議を経て新たに保証判事(Juiz de garantia)制度が導入される。保証判事は、被疑者が捜査機関から不当な捜査を受けることがないよう、被疑者の基本的権利を保護し、捜査が合法的に行われているかを判断する。捜査の初期段階に限り、被疑者などからの訴えや密告を受けた裁判所が保証判事による捜査方法の合法性を問う審理の要否を決定する。

モーロ法相は自身のツイッターで、今回承認された防犯パッケージ法は理想とするものではないが前進したとコメントし、保証判事制度には反対の意向を示した。法相や専門家の間では、保証判事制度の導入は汚職や資金洗浄などを引き起こす可能性もあり、複雑な捜査をより困難にし、場合によっては法的判断から抜け道が生じる恐れもあるとの指摘が出ていた。

(大久保敦)

(ブラジル)

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