2019年1~9月のGDPはゼロ成長、官・民投資が減退

(メキシコ)

米州課

2020年01月06日

国立統計地理情報院(INEGI)は12月23日、メキシコの2019年9月までの需要項目別GDPを発表した。2019年1~9月のGDPは、物価変動を除いた実質で前年同期比0.0%とゼロ成長となった(表参照)。

表 実質GDP成長率(需要項目別・前年同期比)

とりわけ、投資が民間、政府ともに減退し、官民合わせた1~9月の投資の成長率は前年同期比マイナス4.8%だった。GDP成長率全体への寄与度はマイナス1.0%ポイントとなり、投資の減退が景気押し下げの最大要因になった。

民間投資をみると、1~9月の成長率はマイナス3.9%だった。特に、第2四半期(4~6月)から機械設備への投資が大幅に落ち込んだ。米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の漂流やトランプ大統領による対メキシコ関税賦課への懸念などから、企業は設備投資を手控えたようだ。輸出(2.7%増)は増えたものの、在庫が大幅に減った(24.0%減)という動きも、このことを裏付けている。企業は投資を増やすのではなく、在庫を減らすことにより対米向け輸出を継続させたとみられる。

政府投資は、1~9月前年同期比で10.7%のマイナスだった。2018年12月に就任したアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領による歳出削減策に加え、汚職や不透明な手続きを理由としたプロジェクトの差し止めなどが影響した。歳出削減の影響は、政府消費の減少(1.9%減)としても表れている。

GDP成長率全体への寄与度をみると、民間投資はマイナス0.7ポイント、政府投資は同0.3ポイント、政府消費は同0.2ポイントとなった。GDP全体に占める割合が高い民間投資(17.0%)が、経済全体の足を最も引っ張るかたちとなった。

他方、財・サービスの輸入をみると、1~9月の伸びは0.0%と横ばいだった。第2・第3四半期は連続して伸びがマイナスとなっている。輸入はGDPの控除項目であるため、輸入の低下や減少は一時的にはGDP全体を押し上げる効果を持つ。しかし、中期的には、輸入された財・サービスが消費、投資、輸出に回っていくため、輸入の減少は今後の景気低迷を暗示してもいる。

こうした状況を受け、11月26日に政府は財界とともに、民間インフラ投資を促す計画を発表した(2019年12月2日記事参照)。また、USMCAについても、12月10日に3カ国の代表が修正議定書に署名し、発効のめどがたったため、企業の設備投資再開への期待感も出てきている。メキシコ中央銀行が民間シンクタンク36社を対象に行ったアンケートによると(回収期間は12月4~13日)、経済成長率の見通しは、全回答の平均で2019年が0.0%、2020年は1.1%となっている。

(峯村直志)

(メキシコ)

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