2019年度GDP成長率は5.0%の見通し、11年ぶりの低水準

(インド)

ニューデリー発

2020年01月15日

インド統計・計画実施省(MOSPI)は1月7日、2019年度(2019年4月~2020年3月)の実質GDP成長率(2011年基準)推計値を前年度比1.8ポイント減の5.0%と発表した。リーマン・ショックに見舞われた2008年度の3.1%以来11年ぶりの低成長となる見通しで、政府は2月1日の予算案で抜本的な追加の景気刺激策を打ち出す必要に迫られている。

需要項目別にみると、政府最終消費支出は前年度比10.5%と堅調に増加した。一方、個人消費の減退により民間最終消費支出は5.8%、建設やインフラへの投資の減少により企業の設備投資などを表す総固定資本形成は1.0%と、それぞれ大きく減速した(表1参照)。また、米中貿易摩擦の長期化に伴う世界的な景気低迷により、輸出は2.0%のマイナス成長に落ち込んだ。

表1 2019年度の需要項目別成長率(2011年基準、第1次事前推計値)

産業部門別の粗付加価値(GVA)成長率をみると、製造と建設で成長の鈍化が目立つ(表2参照)。製造は自動車や機械、ステンレス鋼など複数の部門で生産が減少し、前年度比2.0%となった。建設は住宅や道路などが不振で3.2%に減速した。

表2 2019年度の産業部門別成長率(2011年基準、第1次事前推計値)

インドステイト銀行は推計値の発表後、2019年度の実質GDP成長率の予測値を5.0%から4.6%に引き下げた(「ビジネス・スタンダード」紙1月8日)。インド商工会議所連合会(FICCI)のサンギタ・レディ会長は1月8日、「5%の成長率は予想の範囲内だ。2019年度下半期は多少勢いが出るのではないか」として、年度後半の景気回復に期待を寄せた。また、景気回復のためには財政出動を伴う消費や投資の促進が必要との見方を示した。今回発表された推計値は、2020年度の政府予算案を編成する際の基礎資料として用いられるため、政府がどのような景気刺激策を盛り込むかが注目される。

(宇都宮秀夫)

(インド)

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