合金鋼の輸入規制を強化、9品目に適合性評価手続き義務化

(マレーシア)

クアラルンプール発

2020年01月14日

マレーシア国際貿易産業省(MITI)は、輸入される合金鋼について、不適切な方法で規制を擦り抜ける製品が国内鉄鋼業に悪影響を与えているとして、規制を強めている。合金鋼(HS7225、7227)の輸入にはMITI発給の輸入許可(AP)を取得する必要があり、2019年3月以降、AP発給の規制を強化してきた。

2019年6月1日から、合金鋼鋼材の2品目はAPから適合性評価手続き(COA)に移行された。11月1日には対象品目が拡大され、計9品目が輸入前のCOA取得の対象となっている(表参照)。

表 合金鋼輸入におけるAPからCOAへの移行状況

規制強化の背景には、一部の外国企業が不必要に合金添加を行い、輸入関税とCOAが課される非合金鋼ではなく、無税かつAP取得のみで輸入できる合金鋼として輸入し、規制回避が疑われていることがある(注)。

こうした状況の下、日本からの輸出に当たっては、日本では化学成分含有量によって合金鋼扱いとされる鋼材が、マレーシアへの輸入では必ずしも合金鋼扱いとはならないことにも注意が必要だ。マレーシアで関税教示制度を活用すれば、輸入前にHSコードの判定を受けた上で、COA取得、またはCOA免除手続きを行うこともできる。

日系鉄鋼関連企業に影響

COA取得のための審査は、建材用については建築業開発委員会(CIDB)、非建材用はマレーシア標準工業研究所(SIRIM)が管轄する。出荷国の工場監査を受けて合格すれば取得できる1年間の有効期間がある長期COAと、輸入時に都度取得する短期COAがあり、日本でのミル監査や出荷ごとのサンプル検査の実施など、AP取得に比べて手続きの工数が多く、取得までの時間も長い。

保税地域の事業者が直接輸入する鋼材や、輸入インボイス当たり500キログラム以下の少量輸入品に関しては、COA取得は免除される。自動車、電気・電子製品、海運・造船、航空宇宙、アルミ、ボイラー・圧力容器、石油・ガスの特定7用途に関しては、状況に応じてCOAの免除を認めているが、自動的に免除されるのではなく、申請してサンプルテストに合格する必要がある。

日本鉄鋼連盟東南アジア地域事務所によると、日本からマレーシアへの合金鋼輸出は、マレーシアの国内鉄鋼メーカーが生産することが困難な自動車や家電産業向けのハイエンド製品が中心だが、「COA取得義務化により、日本からの輸出に係る手続きや費用面での負担は増加した」という。また、COA取得・免除手続きに遅延が発生する場合、日本からの原材料輸入が必要な内需型産業向けの生産が滞るなど、日系鉄鋼関連企業とそのサプライチェーンへの影響は大きいと懸念している。

(注)1月時点で、マレーシアの非合金鋼(HSコード7208~7212)の最恵国(MFN)税率は15%、合金鋼は無税となっている。

(田中麻理)

(マレーシア)

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